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講義ノート:もの作りのための機械設計工学 第9章 機械システム設計
前述したように機械工学科では様々な科目を学ぶ。その中でも熱力学(伝熱工学)と流体力学の知識を利用する機械設計は,様々な仮定のもとで理想化された計算を行うか,あるいは理想的な環境で行われた実験式を利用することが多く,実際の機械の特性に一致しないことが多い。以下,流体を利用した機械設計の失敗例として,人力水中翼船を紹介する。
![]() 図9.16に人力水中翼船の基本構造を示す。図6.21および図6.22に示した人力ボートとほぼ同様の構造であり,双胴船の上に自転車と同じような形状をしたフレームを載せている。ペダルを漕ぐ力は,チェーンおよび歯車機構を介して,水中プロペラへと伝わる。プロペラ取付部の近くには,翼が取り付けられており,ある速度を超えると,船体が水面から持ち上がる。船体の前方には翼の水深を一定に保つための簡易的な制御装置が取り付けられている。水中翼船の最大の利点としては,船体が水面から持ち上がることで,船体と水との間の摩擦抵抗が大幅に低減できることである。
![]() 図9.16 人力水中翼船の基本構造
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設計時には,船体の重量や重心を見積もり,それに見合った翼の形状,寸法(長さ),位置および角度などを決定した。また,翼の設計と同時に,プロペラやフレーム,駆動機構の設計を進めた。
![]() 設計・試作した人力水中翼船は,翼の揚力を利用して船体を浮上させることができたものの,システム的な性能を向上させることはできなかった。失敗の原因としては,船体が重く,大きい翼を必要としたこと,翼の抗力が人間の脚力による推進力と比べて大きかったこと,適切な加速ができるプロペラが開発できなかったことなどがあげられる。このような失敗例からもシステム設計の重要性がわかる。
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