簡易的なトルク計算


1998/10/5 平田宏一


計算の概略

 魚ロボットの一次設計において、最初に魚ロボットの全長、主要寸法、重量および駆動源の仕様等を決定する必要があります。以下に、魚ロボットの大きさおよび駆動源のトルクを検討するため、簡易的な手法によって荷重計算を行いました。


計算方法


 魚ロボットの一次設計において、魚の全長と動力源に必要な出力との関係を検討しなければなりません。右の図に解析モデルを示します。この図に示すように、魚ロボットを4分割し、関節1より前の部分は全く動かず、かつ魚ロボットは前進しないと仮定し、3分割された駆動部の運動を考えます。同図(a)に示すように、関節1、関節2および関節3の中点A、B並びに尾ひれの中点をDとし、それぞれの点の最高速度VAmax、VBmaxおよびVCmaxを次式で近似します。

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ここで、fは周波数(Hz)、rA、rB及びrCはそれぞれの関節1から点A、B及びCまでの長さ、θAmax、θBmaxおよびθCmaxは関節1、関節2および関節3の最大角度です。
 点A、B及びCが運動する際の反力を求めるため、同図(b)に示すように面積がそれぞれSA、SBおよびSCの平板が運動すると仮定し、点A、BおよびCに作用する最大荷重FAmax、FBmax及びFCmaxを次式で算出します。

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ここで、係数CD(=1.2)及び水の密度ρ(=1000 kg/m3)です。関節1および関節2はサーボモータch1で、関節3はサーボモータch1で駆動するとした場合、それぞれのサーボモータに作用する最大トルクTq1maxおよびTq2maxは次式で求められます。

(7)
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計算条件


 右図に示すようなニジマスをベースにした魚ロボットの寸法に基づいて、魚の諸寸法を検討します。魚の全長をLとすると、半径rA、rBおよびrCは、それぞれ0.065L、0.065L、0.085Lとなります。また、面積SA、SBおよびSCは、図式的に求めると、それぞれ0.023L2、0.016L2、0.026L2となります。角度θAmax、θBmaxおよびθCmaxは運動パターンによって大きく異なると考えられるが、ここではそれぞれ20°、40°、60°と設定します。



計算結果


 下図に周波数fをパラメータとした場合の全長Lと最大トルクとの関係を示します。これより、サーボモータch2の最大トルクTq2maxはch1の約4.7倍になることがわかります。また、全長Lが大きくなるに従って、最大トルクは急激に増加することがわかります。


まとめ

 以上より、サーボモータの最大トルクを見積もることができ、魚ロボットの大きさを概ね推定することができました。しかし、上記の計算は、魚ロボットの一次設計を前提としているため、流体力学的な作用を考慮していません。そのため、計算結果は頭部を固定された魚ロボット(慣性モーメントが無限大)が静止している状態から急激に運動を開始する場合の最大荷重を求めたものに相当しており、実際の定常運転よりもかなり大きく見積もられていると考えられます。詳細な設計には、魚ロボットの運動や周波数変動を考慮し、さらに詳細なシミュレーション手法を構築する必要があります。



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Koichi Hirata
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