機械設計のための基礎製図
第8章 展開図と相貫図
8.1 展開図
展開図とは,立体図形の全ての面を一平面上に表した図面のことである。簡単なものでは,図8.1に示すような正六面体や正四面体,正八面体の展開図はよく知られており,機械工学科の学生であれば誰でもが理解できるであろう。
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図8.1 正多面体の展開図
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展開図の例
身近な展開図として,段ボール箱や金属製の箱などがある(図8.2)。これらは1枚の紙あるいは金属板を折り曲げて作られている。また,プレス機械と呼ばれる機械加工では,1枚の金属板から様々な形状の製品が作られる(図8.3)。プレス加工において,展開図は重要である。
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(a) 段ボール箱
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(b) アルミニウム合金製ケース
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図8.2 様々な展開図

図8.3 プレス加工で作られた製品
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8.2 展開図の描き方
ここでは,互いに45°の角度で曲がる直角エルボの展開図を作図例を紹介する。エルボとは,ある角度で交わる管の継ぎ手である(図8.4)。
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図8.4 直角エルボ
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【例題】次の手順で直径50 mmの直角エルボの展開図を作図しなさい。
(1) 45°の角度で切断された直径50 mmのエルボを描く。
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(2) 円を30°おきに12等分する。
(3) 等分された点(A,B,1〜5)から上に垂線を引く。
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(4) 正面図(台形)の真横に円周の長さ(50×3.14=157mm)の直線を引く。
(5) 直線を12等分する。
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(6) 等分された直線から上に垂線を引き,それぞれ 対応する点を求める。
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(7) 得られた点を滑らかに結び,完成させる。
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8.3 相貫図
相貫線とは,2つ以上の立体が交わる部分の線のことである。立体の平面同士が交わる場合,相貫線は直線になるため,相貫線の作図は容易である(図8.5)。しかし,平面と曲面あるいは局面同士が交わる場合,相貫線は曲線になり,その作図は著しく複雑になる。
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図8.5 平面同士の簡単な相貫
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相貫図の例
身近な相貫として,自転車のフレームや配管部品などがある(図8.6)。このようなものの図面を描く場合には,相貫図の作図法をしっかりと習得しておく必要がある。また,特殊な例であるが,図8.7に示す魚ロボットの関節部分では曲面同士が交わっている。関節部分は運動するため,それぞれの部品の干渉を防ぐためにも,設計時には相関図の作図が重要である。
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(a) 自転車
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(b) 配管部品
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図8.6 様々な相貫線

図8.7 魚ロボットの関節部
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8.4 相貫図の描き方
ここでは,円柱同士の相貫図の作図法を紹介する。このような曲面の相貫線を作図する際には,図8.8に示すように立体が交わる部分を直線平行面で切断し,交点を求めるという手順を行う。
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図8.8 円柱同士の相貫
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【例題】次の手順で直径50 mmと直径40 mmの円柱の相貫図を作図しなさい。
(1) 直径50mmと直径40mmの円柱の三面図を描く。
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(2) 直径40mmの円柱の中心から,5mm,10mm,15mm切断面を描く。
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(3) 各切断面の交点を求める。
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(4) 得られた交点を滑らかに結び,完成させる。
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8.5 課題
【課題@】8.2節の手順に従って,直径50 mmの直角エルボの展開図を作図しなさい。
【課題A】8.4節の手順に従って,直径50 mmと直径40 mmの円柱の相貫図を作図しなさい。
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【課題B】次の図を参考にして,各自のアイデアでペーパークラフトの型紙を
作成しなさい。
●1個以上の立体があるペーパークラフトとする。
●直方体だけの作品は不可とする。
●組み立てることを考えて,のりしろもつけること。
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魚のペーパークラフト
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うさぎのペーパークラフト
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ありのペーパークラフト
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【課題C】右図に示す円錐と正六角柱の相貫図を作図しなさい。
●六角ボルトの頭部や鉛筆の先端をイメージするとよい。
●円柱の相貫と同様,立体が交わる部分を直線平行面で切断し,交点を求める。
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円錐と正六角柱の相貫
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