小型スターリングエンジンの設計手法と性能予測法に関する研究
研究の背景
研究の背景
スターリングエンジンは、1816年ロバート・スターリングによって発明されました。当時、安全性が高いスターリングエンジンは実用化、普及した時期もありましたが、その後、内燃機関の発達とともにスターリングエンジンは廃れてしまいました。
ところが、スターリングエンジンの発明以来、150年以上もたった1973年に第1次オイルショックが起こり、さらに、「省エネルギ・環境汚染」が、大きな社会問題となっている現在、スターリングエンジンは再び脚光を浴びています。
その理由は、スターリングエンジンは以下のような特徴があるためです。
(1) 実際はともかく、理論上の熱効率はカルノーサイクルの効率と同じである。
(2) 外燃式であるため、化石燃料以外のどんな燃料でも利用できる。
(3) 内燃機関のような爆発燃焼をしないため、排気ガスがクリーンで、非常に静粛な運転をする。
現在、地球規模での「省エネルギ・環境汚染」が深刻な問題となっています。そのため、排気ガスを放出し、騒音が大きい内燃機関をそのまま使い続けることは、もはや許されていません。そして、「人にやさしい・環境にやさしいエンジン」の開発が要求されています。この要求に答えられる動力源として、スターリングエンジンがあります。
スターリングエンジンは、右図のように様々な形式があります。これらに関する研究・開発は、国の内外で活発に行われています。特に逆サイクルを利用した冷凍機は、一部で実用化されているものもあります。本研究で開発しているエンジンは、「高温度差スターリングエンジン」です。
高温度差スターリングエンジンの開発状況
高温度差形スターリングエンジンの開発状況としては、1982年、通産省指導のもとに行われたムーンライト計画によって、空調用のヒートポンプ等のスターリングサイクル機器の研究・開発が行われ、その高効率性並びに低公害性が実証されました。しかし、製作コストの増大、無潤滑で作動させるシール装置の耐久性及び重量当たりの出力(比出力)が小さいなど、未解決な問題が多く、未だ実用化には至っていないのが現状です。
発電用スターリングエンジンとしては、1938年にオランダのフィリップス社で、静粛性及び簡便性を重視した軍用のスターリング発電装置の開発が行なわれ、150台ほど生産されましたが、それ以後は、生産されず消え去ってしまったという記録があります。
最近では、ニュージーランドのWisper GEN社が800 W級、ドイツのSOLO社が30 kW級、北欧のSIGMA社では1 kW級のスターリング発電装置の研究・開発を行っています。しかし、これらはいずれも可搬性はなく、すべて定置形です。
研究の目的
私たちの生活にとって電力は、必要不可欠なものです。現在、この発電装置の動力源としては、一般に内燃機関が利用されていますが、現在のエネルギ問題を考えた場合、公害や環境汚染を増加させる結果となるので、このまま内燃機関を使い続けることはできません。また、発電機の用途や出力レベルは、非常に多岐にわたっていますが、本研究は、現在の時代背景に基づいて、最近、特に要求が高まっている、野外用の「人にやさしい・環境にやさしい可搬式の小型スターリング発電装置」の実用化を想定し、この発電機を駆動させるための、小型・軽量なスターリングエンジンの開発を目的としています。
スターリングエンジンの開発における問題点
小型スターリングエンジンの問題点として、次のことがあります。
要素技術と設計手法の問題点として、
(1) 高温熱源よりエンジン内に熱を取り込む、あるいはエンジン内から低温熱源に熱を放出するための小型の高効率熱交換器の開発。
(2) 小型かつ機械損失が小さい駆動機構の開発。
それらを解決するために本研究では、
(1) エンジンの小型化が可能な形式について検討し、独創的なエンジン形式の採用。
(2) 小型エンジンに適する特殊な形状を有する熱交換器を提案する。
(3) エンジンの小型化及び構造の簡単化が可能なスコッチ・ヨーク機構の採用。 などの、解決法を提案しています。
また、解析手法の問題点としては、
(1) エンジンの小型化に伴う、従来の高性能とは異なるエンジン特性及び熱損失の評価。
(2) 機械損失の正確な評価。
それらを解決するために本研究では、
(1) 従来の解析手法では評価するのが困難であった、ピストン背面の空間における非可逆的熱損失の評価。
(2) 簡易的かつ正確な機械損失の予測。
などの、解決法を提案しています。
|