スターリングエンジンの形式と特徴

 スターリングエンジンは,2つのパワーピストンで構成されたα形,ディスプレーサとパワーピストンとが同一シリンダに配置されたβ形,ディスプレーサとパワーピストンとが異なるシリンダに配置されたγ形,さらにパワーピストンの上面と下面の空間を利用したダブルアクティング形に分類されます。


α形スターリングエンジン
 2つのパワーピストンで構成されるα形スターリングエンジンは,圧縮比(最大容積/最小容積)を高めやすく,高出力が得られやすいという特徴があります。また,β形やγ形などのディスプレーサ形スターリングエンジンとは異なり,ロッドシールが不要なため,特に模型エンジンでは,構造の簡単化が可能になります。
 しかし,両方のパワーピストンに厳重なシールが必要であり,特に高温部でのシールには細心の注意を払わなければなりません。
 また,熱交換器(ヒータ,再生器,クーラ)を円周上に配置しづらく,作動ガスの流れを均一にするのが難しいなどの問題もあります。

α形スターリングエンジン


β形スターリングエンジン
 ディスプレーサとパワーピストンとが同一シリンダに配置されたβ形スターリングエンジンは,エンジンを小型化できるのが最大の特徴です。また,熱交換器を円周上に配置しやすいため,作動ガスの流れを均一にするのが容易な形式です。
 原理的にはγ形と同じですが,β形はディスプレーサとパワーピストンとをオーバーラップできる点が異なります。そのため,作動空間を有効に利用でき,高出力化が可能となります。
 一方,同一シリンダ内のディスプレーサとパワーピストンとに適切な位相差を保ちながら往復運動させるための駆動機構が複雑になるなどの問題もあります。

β形スターリングエンジンのオーバーラップ容積について

β形スターリングエンジン


γ形スターリングエンジン
 ディスプレーサとパワーピストンとが異なるシリンダに配置されたγ形スターリングエンジンは,エンジンが大型となりやすく,圧縮比が高められないため高出力化が難しいという問題があります。そのため,従来の高性能スターリングエンジンではほとんど採用されていません。
 しかし,熱交換器形式の自由度が高いことやディスプレーサとパワーピストンの容積比を自由に変えやすいことなどから,大量の入熱量を必要とするような低温度差スターリングエンジンに適した形式であると言えます。
 また,ディスプレーサとシリンダに隙間を設ける模型エンジンでは,高温部のシールが不要になるため,最も作りやすい形式と言えます。

γ形スターリングエンジン


ダブルアクティング形スターリングエンジン
 ダブルアクティング形スターリングエンジンは4シリンダで構成されています。隣り合うピストンの上面と下面の空間を,熱交換器を介して連結することで,作動空間は通常のα形スターリングエンジンの4基分(8シリンダ分)に相当します。エンジンの小型化が可能であり,高出力エンジンに適した形式です。
 一方,各ピストンおよびロッドシールに厳重なシールが必要になることや4つのピストンを動かす駆動機構が複雑になることなどの問題があります。

ダブルアクティング形エンジンの駆動機構

ダブルアクティング形スターリングエンジン


[Stirling Engine Dictionary]