講義ノート 機械工学科の学生のための初級メカトロニクス
第1章 メカトロニクスとは
 メカトロニクスとは,エレクトロニクス(電子工学)の技術と機械を結び付けたものであり,機械の制御などに電子技術を応用し,機械の高性能化・自動化を図るために利用されます。最近では,半導体製造技術の発展により,日常使われる多くの機械が電子制御化されています。
1.1 メカトロニクス技術を利用した機械

 まずはじめに,身の回りにあるメカトロニクス技術を利用した機械を見ていきましょう。様々な機械で,マイコン制御やモータ技術などのメカトロニクス技術が利用されていることがわかります。

(1) 作業を能率的に行うための機械
 右写真は,自動車用ガソリンエンジンです。最近のエンジンは,燃料噴射などに電子制御技術が使われています。

【詳細】もっと詳しい情報は・・・
 ガソリンエンジンの制御技術については,第9章「メカトロニクス機械の制御技術」で詳しく説明します。

自動車用エンジン
(2) 生活を便利にするための機械
 洗濯機や掃除機,エアコンなどの家電機械では,省電力化のために,様々な制御技術が使われています。

【詳細】もっと詳しい情報は・・・
 第9章「メカトロニクス機械の制御技術」では,家電機械のファジィ制御について紹介しています。

家電機械
(3) 情報収集・情報処理のための機械
 携帯電話やパーソナルコンピュータなどの情報機器では,半導体技術の発展により,小型・高性能な電子機器が普及しています。

情報機器
(4) 機械を作るための機械
 機械の製造分野においては,コンピュータ制御の工作機械が活躍しています。高精度な部品の製作や大量生産などにNC工作機械は必要不可欠となっています。

【詳細】NC工作機械についてもっと知りたい方は・・・
 筆者が公開している「続:機械加工の基礎知識 〜NC旋盤/マシニングセンター〜」をご覧ください。

マシニングセンタ(NC工作機械)
1.2 メカトロニクス関連研究の紹介

 まだ実用レベルではありませんが,当研究所で実施しているメカトロニクス関連研究を紹介します。

(1) 魚ロボットの研究・開発
 高性能な海中ロボットの実現を目指して,魚ロボットの研究を進めています。いくつもの魚ロボットを設計・試作していますが,そのいくつかにはマイコンを利用して動きを制御するものもあります。

【詳細】魚ロボットについては・・・
 魚ロボットについては,「魚ロボット・ホームページ」をご覧ください。

実験用魚ロボット
(2) スターリングエンジンの研究
 スターリングエンジンは,高熱効率化の可能性,燃料の多様性,低公害性などの優れた特徴を持つ外燃機関です。エンジンの原理にメカトロニクス技術は使われていませんが,始動時の制御や発電機の出力制御にメカトロニクス技術が利用されます。

【詳細】スターリングエンジンについては・・・
 スターリングエンジンについては,「Stirling Engine Dictionary」をご覧ください。

実験用スターリングエンジン
(3) バリアフリー機器の研究
 将来の高齢化社会に向けて,バリアフリー機器の研究・開発はとても重要です。車いすの走行特性を測定するための計測用車いす(右写真)や車いす用走行補助装置では,パソコン計測技術やメカトロニクス技術が使われています。

【詳細】船舶バリアフリーについては・・・
 船舶バリアフリーについては,「船舶バリアフリー・ホームページ」をご覧ください。

計測用車いす
1.3 メカトロニクス技術を学ぶためには

 以上のようなメカトロニクス機械を作り上げるためには,機構学,機械要素,コンピュータ技術,計測・制御,電気・電子部品,さらに材料力学や熱・流体力学などの幅広い知識が必要になります。そして,それらの幅広い知識と要素を組みあげていく能力が重要になります。
 この講義では,マイコン技術をハードウェアとソフトウェアの両面から身につけていただきたいと思います。そして,インバータ制御などの最近の制御技術に関する知識や機械の性能評価などに利用できるパソコン計測の知識などについても紹介していきます。
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