小型スターリングエンジンの設計手法と性能予測法に関する研究
小型エンジンの性能試験
実験装置並びに実験方法
設計手法の妥当性を検討するために、右図に示すような実験装置で、試作エンジンの運転試験を行いました。エンジン内の圧力・温度は、それぞれ、ひずみ式圧力計、シース型熱電対で測定し、このようにパーソナルコンピュータで処理されます。
また、エンジンの出力軸には、ポータブル発電機を模擬するために、直流発電機が取り付けられています。実験では、低い回転数まで含めて、広い回転数域で性能試験を行うために、容量が大きいものを使用しています。この直流発電機に接続された抵抗値を変化させることにより、負荷を調整します。また、発電機には、このようなアームが取り付けられていて、これに連結された電子天秤で、軸出力を求めます。
実験条件
実験条件は右の表のようになっています。加熱源には、電気ヒータを用いました。試作エンジンは、熱源として燃焼ガスを利用するように設計していますが、この実験では、供給する熱入力の調節を容易にするために、電気ヒータを用いて加熱を行っています。
エンジンの出力特性
右図は、平均作動ガス圧力0.7 MPaとした際の、エンジン回転数と有効熱入力、冷却熱量、図示出力を示しています。各線は計算結果、そして、プロットされている点は実測結果です。これより、有効熱入力の実測と計算とは非常によく一致していることがわかります。しかし、実測から熱損失の内訳を詳細に評価することは難しいため、各熱損失の評価方法が適切であるかを判断することはできません。冷却熱量の計算は、実測よりやや低く評価されていますが、これはエンジンの設計計算には十分であると考えられます。一方、図示出力の計算結果は実測より大きい値となっていますが、これは計算において、作動ガスの漏れを考慮していないことなどが原因であると考えられます。
エンジンの軸出力
右図は、平均圧力を0.5 MPa、0.7 MPa及び0.9 MPaと変えた場合の、エンジン回転数と軸出力との関係の実験結果を示しています。これより、平均ガス圧力0.9 MPa、エンジン回転数1100 rpmにおいて、設計目標の100 Wが得られているのがわかります。
エンジンの熱効率
右図は、エンジン回転数と内部変換効率及び図示熱効率との関係を示しています。各線は計算結果、そして、プロットされている点は、実測結果です。これより、各効率の実測は計算より若干低いものの、回転数依存性の傾向はよく一致していることがわかります。た、最高軸出力が得られた運転条件において、図示熱効率の実測値は約22 %でした。
発電機の性能
右図は、平均圧力を変化させた場合の、エンジン回転数と発電機出力及び発電機効率の実測結果を示しています。これより、発電機出力の回転数依存性は、先ほどの軸出力とほぼ同様の傾向であり、エンジン回転数の上昇に伴って増加していることがわかります。そして、最高の発電機出力は約60 Wでした。
一方、発電機効率については、作動ガス圧力が高い場合、エンジン回転数がより高い範囲で、さらに高効率化が可能であることがわかります。発電機効率は、回転数に大きく影響を受けていますので、エンジンの出力軸と発電機との間に増速装置等を設けて、最適な回転数で発電機を駆動することにより、さらに高効率化ができると考えられます。
ヒータ及びクーラの伝熱特性
右図は、平均ガス圧力0.7 MPaにおける、エンジン回転数と熱交換器の伝熱性能を表すユニット数との関係を示しています。これより、ユニット数の実測は計算よりかなり大きく、エンジン回転数が低くなるに従って、その差が大きくなることがわかります。これは複雑な流路の形状や往復動をする内管の作用により、作動ガスの流れが乱されることで熱伝達が促進されたためと考えられます。すなわち、採用した熱交換器は、伝熱性能が通常の多管式熱交換器より優れていることを示しており、伝熱性能を極力高くしたい小型エンジンに、適した形式であると考えられます。
まとめ
(1) 設計の目標性能である軸出力102W、図示熱効率22 %が得られた。
(2) 熱・流体的諸損失を考慮した解析モデルにより、エンジン性能を概ね評価することができることを確認した。
(3) 新たに開発した内管往復動式熱交換器は、高い伝熱性能を有することを確認した。
(4) 試作したエンジンの再生器は、伝熱性能より、圧力損失の影響を大きく受けることがわかった。
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