小型スターリングエンジンの設計手法と性能予測法に関する研究

実用化への提言


実用化への提言

 本研究では、小型スターリング発電機の実用化を想定して、それに用いる小型エンジンの開発を行いました。本研究によって、エンジンの解析手法から要素技術に至るまで、様々な研究成果を得ることができたと考えています。それらの問題点をまとめて、実用化への提言を行います。


解析手法について

 解析手法として、本研究では、特殊な内管往復動式熱交換器を開発し、簡単なモデル化によってその伝熱性能を評価しました。しかし、詳細な伝熱性能の解析には至っていません。今後は熱交換器単体での試験等を実施し、多くのデータベースを構築していく必要があると考えています。

 機械損失においては、クーロン摩擦損失と粘性摩擦損失とを分離した解析によって、実機の機械損失を適切に評価できることを確認しました。しかし、エンジンを試作する前で粘性摩擦損失を予測することは極めて難しいのが現状です。今後は、多くのエンジンのデータベースを蓄積していくことが必要であると考えています。

 バッファ損失においては、ユニット数を用いた解析によって、実機のバッファ損失を概ね評価できることを確認しました。しかし、その一般性についての議論は十分ではありません。今後は、バッファ空間内部の温度分布、ガスの流れ等の詳細な解析を進めていく必要があると考えています。


要素設計技術について

 熱交換器の要素設計技術としては、その最適寸法を見いだすための手法を検討する必要があると考えています。

 シール装置については、本研究においてガス漏れがエンジン性能に及ぼす影響について考察をすることができました。今後は、摩擦・摩耗が全くない、より理想的なシール装置を開発していく必要があります。

 ピストンの駆動機構については、エンジンの小型化が可能なスコッチヨーク機構を採用し、その機能が十分であることを確認しました。しかし、材質や耐久性については十分な議論がされていません。今後、別途耐久試験等を行う必要があると考えています。


最後に

 以上の問題点、そして、本研究では十分に議論が行われなかった、エンジンの制御や製作コスト等の問題が解決されれば、実用化は間もないものと思われます。
 本研究では、このようなポータブル発電機の開発を目指して研究を行ってきましたが、現在の省エネルギ・環境汚染の問題を考えた場合、右図に示すように、太陽熱やバイオマス燃料を利用することも十分検討しなければならないと考えています。


[ Previous ] [ Index ]
[ Stirling Engine Dictionary ]
All Right Reserved, Copyright(C), 1998 Koichi Hirata (khirata@nmri.go.jp)