SMART 研 究 概 要


 本研究は、平成11年度 科学技術庁科学振興調整費開放的融合研究推進制度の先行課題「新機能流体デバイスによる乱流制御」を経て、平成12年度に新規課題「乱流制御による新機能熱流体システムの創出」として採択されたものです。「開放的融合研究」の名の通り、3つの独立行政法人、 (航空宇宙技術研究所産業技術総合研究所海上技術安全研究所) を中心とし、大学等の多くの研究者が参加して研究を実施しています。

研究の背景
 気体や液体の流れとその制御は、内燃機関・火力発電によるエネルギーの発生、自動車・航空機・船舶による貨客輸送、製鉄・化学における材料の流動化による製造など、現代文明を支える基盤技術であり、工学の主要課題です。本研究では、流体および周囲環境に知的機能を付与することにより流体の必要機能のみを効果的に抽出するシステムを創製し、乱流制御技術の新たな体系化をはかり、熱流体関連技術の革新的進展を促すことを目的とします。
 実在流れの大半においては、ミクロな渦運動の集合体である乱流が、流れに対して支配的影響を及ぼします。一方、従来流れを制御すると言ったとき、その制御方法は、バルブの開閉などマクロ的で、乱流を支配したとはおよそ言えないものでした。しかし最近、テラフロップス級大型計算機による乱流の数値シミュレーション技術、マイクロマシン技術、制御理論が発達し、乱流をミクロ的に制御するための環境が急速に整いつつあります。


実施する研究
 本課題では、参加3研究所がそれぞれの特長を生かし、それぞれの持つポテンシャルを融合・補完し研究を実施しますが、そのためにはまとめ役が必要です。本課題では研究総括責任者のもと、意志決定機関として研究マネージメントグループを設置し、参加研究者が互いに連携し合いながら研究を進めていきます。具体的には、下記の2つのサブテーマの内容を研究しています。これにより、新機能流体デバイスを創製・体系化し、斬新な乱流制御手法を確立したいと考えています。

  • サブテーマ1:能動型乱流制御 (主担当:産業技術総合研究所、海上技術安全研究所)
    マイクロマシンによる乱流制御では、壁面に埋め込んだ微小なセンサー/アクチュエータからなるマイクロマシンシステムにより、壁面近傍のミクロな流れを制御し流れ全体を制御します。
    物性制御では、微細気泡や界面活性剤等を流体に注入し、流体が潜在的に持つミクロ的特性を選択的に顕在化させ、制御します。

  • サブテーマ2:乱流燃焼制御の検討 (主担当:航空宇宙技術研究所)
    火を使いだしたときから文明が始まったとも言われています。今も我々が利用しているエネルギーのほとんどが、燃焼によっています。このサブテーマでは、燃焼と乱流の関係を把握し、乱流燃焼場を制御することで環境に優しい燃焼技術の実現を目指します。


今後の目標
 熱流体関連分野において乱流制御技術は夢の技術です。本プロジェクトでは乱流それ自身と新機能流体デバイスによる制御機構の現象把握と解明を行い、新しい流体制御法を体系化し次世代先端的技術としての実用化の目処をたてようとしています。具体的には、マイクロマシン技術と最新制御理論を取り入れた乱流構造制御および微細気泡等を使用した流体物性の局所的制御による能動型制御ならびに、より複雑な乱流燃焼制御の確立を通して流動抵抗制御、熱ならびに物質輸送の高効率化を実現し、新たな熱流体システムを構築します。


融合研究の効果
 乱流の知的制御研究は種々の境界領域を含み一つの組織だけではなかなか取り組みにくいテーマです。マイクロマシン技術を得意とする産総研、高精度実験技術を有する海技研、高度な乱流数値シミュレーション技術を有する航技研の3研究所が、乱流制御という共通の目標の下にそれぞれのポテンシャルを持ち寄って融合協力することで、単独では達成しえない成果を挙げることが期待されます。さらに、このプロジェクトが本研究分野における世界的研究・情報交流の中心として位置づけられれば、と考えています。 我々は、研究の求心力になるとともに、情報の求心力にもなることで、国内外の乱流制御研究に貢献していきたいと考えています。






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