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お知らせ

令和2年12月11日

第20回 海上技術安全研究所講演会をウェビナー形式で開催
「2025年自動運航船の実現に向けて」 現状と展望を語る

 国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所(所長:安部昭則)は、12月10日(木)に「第20回海上技術安全研究所講演会」をウェビナー形式にて開催しました。
 今回は、「2025年自動運航船の実現に向けて」と題して、外部講師及び海上技術安全研究所の研究員など6人が様々な切り口から自動運航船の実現に向けた最新の動向について事前登録頂いた皆さまにライブ配信を行い、造船・海運・舶用工業などの業界及び行政機関・大学・金融機関などから延べ380名の方々にご参加いただきました。

国際基準戦略「性能の見える化」で一歩先へ
 冒頭、安部所長による開会挨拶後、基調講演として、国土交通省大臣官房技術審議官の斎藤英明氏に「自動運航船の実用化に向けて~開発実証と基準戦略」と題して、自律運航船の技術開発に向けた国土交通省の取り組みをご説明いただきました。
 斎藤英明大臣官房技術審議官は、各国が自動運航船の実現に向けて取り組む中、自動運航船システムに不可欠なセンサーなどの技術分野に関して、戦略的に性能基準を策定することを説明し、IMOが進める安全基準の検討と並行し、我が国の開発品が評価される基準の整備が必要となることを示唆しました。

 引き続き、外部講師として招聘した日本財団の海野光行常務理事、日本マイクロソフトのチーフデジタルアドバイザー田澤孝之氏の2名による特別講演を実施しました。
 日本財団常務理事である海野光行氏は、「無人運航船の実現に向けて」と題して、国外で進む自動運航船プロジェクトと日本財団が進める無人船プロジェクトを紹介し、自律運航船に関して、国際基準化・標準化の主導を日本が握るためには、オールジャパンでプロジェクトを実施すべきと述べました。一方で、オールジャパンでの限界を念頭に入れる必要性も示唆し、日本がコア技術を握りつつ、足りない部分に関して海外から取り入れていくことも必要との見解を示しました。
 日本マイクロソフトのチーフデジタルアドバイザー田澤孝之氏は、「マリタイムトランスポートインダストリでのDX」と題して、自動運航船の実現に向け、関係する企業がデジタルを『手の内化』することが重要と説明しました。さらに、自動運航化の実現に向けた企業のDXのステップとして、自社内のデジタル化の推進、自社データによる業務プロセスの可視化、デジタル人材の育成などを挙げ、自動化の実現のためには、自律運航船を構成する部品はAIやセンサーを用いるソフトウェアが殆どとし、ソフトウェアを専門としない企業が自動化を実現するためには、デジタル企業に変革することが重要であると示唆しました。

「要素技術の開発」で自動運航船の実現をサポート
 後半の研究講演では、はじめに、間島隆博・知識・データシステム系長が、「自動運航船の実現に向けた避航操船技術の研究開発」と題して、海上技術安全研究所が開発を進めている立体視による他船検出や自動着桟・陸上支援の開発状況と避航操船アルゴリズムの説明を行いました。
 引き続き、鈴木良介・流体性能評価系研究員が、「操船シミュレータのための波浪中操縦運動・船体動揺推定モデルの開発」と題して、自律運航シミュレータでの船体運動推定法の開発に関して説明しました。

 また、平田宏一・動力システム研究グループ長が、「海技研における自動着桟システムと要素技術の研究開発」と題して、小型実験船による自動着桟試験の現状を説明しました。
 講演最後は、上野道雄研究統括監が閉会の挨拶として研究講演を総括しました。特に講演途中でのPCトラブルにより、当初の予定を大幅に超過したことに関するお詫びと今後のウェビナーの改善をお約束いたしました。長時間の講演会となりましたが、多数の方々から質問があり、研究開発が進む自動運航船に対する関心の高さが伺えました。

 講演会の様子は LinkIconこちら