船の話

ABOUT THE SHIP

<船の物理>

  1. 船はなぜ浮くか。

     地球上にある物体には下に引っ張る力(重力)が働きます。この重力は「物体の質量」に比例します。この物体が水中にあると、重力とは別に水が物体を上に押す力(浮力)が働きます。この浮力は「物体によって排除された水の質量」に比例します。
     「物体の質量」が「物体によって排除された水の質量」よりも大きければ重力によって物体は沈み、逆に小さければ浮力によって物体は浮き上がります。そして空気中に物体が出ることで排除される水の量も少なくなり、「物体の質量」と「物体によって排除された水の質量」が釣り合う位置で物体は静止します。
     船は鋼板でできていて、たくさんの貨物を積むので重そうに感じられますが、それよりも水の方がはるかに重いので船は水面に浮いています。
     1[立方メートル]の水は1[トン]も重さがあります。

  2. 潜水船は何で浮いたり沈んだりできるのか。

     船内の空気(又は水より軽い物質)が入っていた箇所に水を入れれば、その箇所は水を排除しなくなるので浮力が消失して船は沈みます。逆に水が入っていた箇所に空気(又は水より軽い物質)を送り込んで水を排除すれば浮力が発生して船は浮上します。
     例えば空気は圧縮して体積を小さくすることができるので、空気の圧縮と開放を機械的に行えば、浮上と潜水を繰り返すことができ、さらにバランスを取れば水中に静止することもできます。

  3. タイタニックより丈夫な砕氷船;氷の海を航行できる理由

     タイタニックより丈夫とは言っても氷山にぶつかれば砕氷船も沈没してしまいます。しかし、砕氷船は文字通り氷を砕き、南極や北極の氷で覆われた海を航行することができます。普通の船では氷に閉じこめられ身動きできなくなるような海域でも、砕氷船ならば氷を割りながら進路を作っていくことができます。そのためにどういった工夫をしているのでしょう。
     氷は意外と硬く、普通の船では割ろうとすると自分自身の船体を傷つけ、下手をすると穴を開けてしまう危険性もあります。砕氷船ではまず、氷にあたっても簡単に穴が開かないように、氷にあたる部分の鋼板を厚くしたり構造に工夫するなどして強度を高めてあります。しかしそれだけではありません。船の形も普通の船よりずんぐりしています。また砕氷方法も直接氷にあたって割るのではなく、氷に乗り上げて船の重さを利用して氷を割るように工夫しています。

  4. 船の鋼板の厚さ

     船は鋼鉄の板(鋼板)で造られています。長さが300[m]ある船でも鋼板の厚さはおよそ30[mm]です。これを長さ30[cm]の模型に換算すると厚さは0.03[mm]になります。
     一般的な紙の厚さは0.07[mm]なので、この厚さは紙の厚さの半分ということになります。
     鋼板の厚さを薄くすれば、重さが軽くなった分貨物を多く積むことができ、また船を造るときの材料費も安くすることができます。ただし船は、海上で大きな波を受けても折れたりしないように安全に配慮して造られています。

  5. 船の中で一番揺れない所はどこ。

     波の中で船は並進運動と回転運動を行っています。並進運動とは上下、左右、前後に移動することを言い、回転運動とは縦回り、横回り、水平回りに回転することを言います。
     回転運動は重心を中心として回転します。この重心の近くにいれば回転運動が少なくなり、体に感じる揺れも少なくなります。
     普通私達が乗る船の重心は船体中央からやや後方にあります。

    また、これらの運動のことを

    • 並進運動:
      • 前後揺(サージ)
      • 左右揺(スウェイ)
      • 上下揺(ヒーブ)
    • 回転運動:
      • 横揺(ロール)
      • 縦揺(ピッチ)
      • 船首揺(ヨー)

    と言います。

<船の種類>

 船を用途別に分類すると次の5種類に分けられます。

  1. 商船(旅客船、貨物船)
  2. 作業船(タグボートや浚渫船(しゅんせつせん)など)
  3. 漁船
  4. 特殊船(調査船など)
  5. 艦艇

 このうち旅客船とは法律上、旅客を13人以上乗せる船のことを指します。つまり貨物船でも旅客を12人まで乗せることが認められています。
 また、貨物船は効率よく運航できるよう貨物ごとに専用化された専用貨物船が主流となっています。専用貨物船には、タンカー、LNG船、コンテナー船、自動車運搬船、そして石炭や穀物などを運ぶ撒積船(ばらづみせん)などがあります。


<トン数>

 船の大きさを表す指標の1つにトン数があります。このトン数には目的に応じて4種類のものがあります。この中には容積や貨物の重量をトン数としているものもありますので注意が必要です。

  1. 排水量(displacement) [ton]

     船が排除した海水の質量のことで、船全体の重さを表す。
     艦艇の大きさを表す指標に用いられることが多い。

  2. 総トン(gross tonnage) [GT]

     船の容積を表す。
     100[立方フィート] を1[GT]として換算する。
     旅客船や貨物船の大きさ表す指標に用いられることが多い。
     税金や各種手数料の算定に使用される。

  3. 純トン(net tonnage) [NT]

     積める貨物の容積を表す。
     100[立方フィート] を1[NT]として換算する。
     税金や運河の通行料の算定に使用される。

  4. 載貨重量トン(dead weight) [DW]

     積める貨物の重さを表す。
     タンカーや撒積船(ばらづみせん)の大きさを表す指標に用いられることが多い。

<船に関する国際条約、法律>

 国際連合の専門機関の1つである国際海事機関(IMO:International Maritime Organization)において船舶に関する国際条約が締結されます。主なものとして次の条約が挙げられます。

  • SOLAS条約(the International Convention for the Safety of Life at Sea:
    海上における人命の安全のための国際条約)
  • MARPOL条約(the International Convention for the Prevention of Pollution from Ships:
    船舶からの汚染防止のための国際条約)
  • LL条約(the International Convention on Load Lines:
    満載喫水線に関する国際条約)
  • トン数条約(the International Convention on Tonnage Measurement of Ship:
    船舶のトン数測度に関する国際条約)

 これらの国際条約に基づいて法律が制定、整備されています。船舶技術に関する我が国の主な法律には次のものがあります。

  • 船舶法
    国旗の掲揚や船名等の表示などの日本船舶の要件に関して記されています。
  • 船舶のトン数の測度に関する法律(トン数法)
    トン数の算定方法が記されています。
  • 船舶安全法
    人命安全の保持を目的として、船舶検査や構造・施設等に必要な技術に関して記されています。
  • 海上衝突予防法
    船舶の衝突予防のために航行方法等に関して記されています。
  • 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(海防法)
    船舶からの油、有害液体物質、廃棄物の排出、焼却規制に関して記されています。
  • 造船法
    事業の円滑化や造船技術の向上を目的とした造船施設、設備の規制に関して記されています。