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環境影響評価研究グループ
 環境影響評価研究グループでは、船舶の活動に伴う大気汚染・海洋汚染などの環境問題の解決を目指して、船舶による環境汚染の予測及び現象の解明、環境影響評価手法の確立などの研究に取り組んでいます。また、これらの研究成果に基づき、我が国が環境政策の立案や国際海事機関 海洋環境保護委員会(IMO/MEPC)への提案などを行う際に、技術的助言やバックデータの提供を行っています。
メンバー
グループ長城田 英之
村岡 英一
小島 隆志
宮田 修
横井 威
原 正一(嘱託)
柴田 俊明(非常勤)
研究紹介
船舶排ガスによる大気汚染に関する環境影響評価手法の開発

 船舶の主機関などから発生する排ガスに含まれる硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)などは、大気環境を悪化させるのみならず、人体の健康にぜん息などの深刻な被害を及ぼす大気汚染物質です。 当研究グループでは、AIS(船舶位置情報システム)を利用した大気汚染物質排出量解析システムの開発や、CMAQを用いた大気質シミュレーション計算の実施などを通じて、上記の大気汚染物質が停泊・航行中の船舶からどの程度発生しているか、あるいは、船舶が大気汚染全体に対してどの程度影響しているかなどを評価しています。さらに、これらの研究をベースとして、船舶排ガスを対象とした環境対策の有効性を評価するための手法や、実行上導入可能かつ科学的合理性のある大気規制指標の開発などに取り組んでいます。

 AIS情報に基づく航行船舶からの非メタン炭化水素(NMVOC)排出マップの例 大気質モデルCMAQを用いた大気質シミュレーション計算結果(2005年7月の月平均NOx濃度分布)
船舶からの油及び有害液体物質の排出・流出による海洋汚染防止のための研究

 タンカーなどの船舶が衝突・座礁などの海難事故を起こして貨物油や燃料油が流出した場合には、オイルフェンスや油回収装置の利用あるいは油処理剤の散布などの方法によって、流出油が海岸に漂着したり遠方に拡散したりする前に回収・処理して海洋汚染被害を小さくすることが大切です。
 当研究グループでは、模擬ラボ試験の実施などを通じて、海中に流出した油に対して油処理剤を効率良く適用して分散処理するための基礎研究や、荒天時などの厳しい海象条件でも油回収性能の高いオイルフェンスなどの開発研究を行っています。また、座礁船などの燃料タンクから海洋への油流出を防止することを目的に、海難事故現場において、座礁船の燃料タンクから低温下で流動性の低い油を効率良く抜き取るための手法の開発にも取り組んでいます。

広口円筒状の反応ダクト(赤枠で表示)内で浮上油に対して油処理剤を噴射する様子 高周波電磁誘導法を利用した油回収実験装置の模式図 東京湾の海底から流出する油の3次元表示と毒性成分の流出履歴の例
船底防汚塗料による越境水生生物の移動防止のための研究

 近年、船舶のバラスト水に含まれたり、船体表面に付着したりすることで越境水生生物が地球規模で移動した結果、在来生物種を絶滅させる、いわゆる“生態系の擾乱(じょうらん)”が、環境問題としてクローズアップされています。
 当研究グループでは、環境分析研究グループと協力して、船体に塗布すると徐々に溶出して生物の付着を防止する機能を有する防汚塗料を用いて、ラボ試験や実海域試験などを実施することにより、船体に付着する水生生物による越境移動リスクの評価手法を確立するための研究を進めています。

一様な流れ場で船底防汚塗料の溶出試験を行うことが可能な回流型溶出装置の模式図 回流型溶出装置の全体写真 PTV(粒子像追跡計測法)及びPIV(粒子像計測法)による流速解析