SRI NEWS
船体構造材料の寿命を疲労や腐食の面から調べるための試験研究施設「寿命
評価実験棟」がこの度完成しました。
この実験棟は、1990年頃から多発した高齢大型ばら積み船の腐食損傷事故、
超大型タン力一の原油タンク内のき裂損傷等が発端で、船体の寿命に関する研究
を促進する必要性が強く認識されたため、新たに整備されたものです。
本実験棟に設置された各種試験施設の概要を以下に紹介します。
○複合荷重試験装置 実験棟の中央に設置された反力床・反力壁に最大4台ま
での動的荷重容量1000KN(約100トン)の可搬式アクチェエータと試験体を組み
合わせて、3方向までの軸力や軸力と曲け・荷重等の複合荷重を載荷することが
可能です。
写真1 複合荷重試験装置
○固定式載荷装置
縦型1000KNの油圧サーボ式疲労試験機では、単軸の引っ張り、圧縮及ぴ3点
曲け・荷重による大型部材の静的試験や疲労試験を行うことができます。更に、1m1
秒までの低速域及ぴ10m1秒までの高速域で圧縮の衝撃荷重試験も行うことができ
ます。
○腐食環境試験装置 海水腐食環境で長期間にわたって材料の疲労試験を行う
ことができる試験装置が設置されています。この長期間腐食疲労試験装置は、縦
型200KN(約20トン)、縦型100KN(約10トン)及び縦横可変型100KNからなる複
数の高精度疲労試験機で構成され、効率的な腐食疲労試験の実施を可能にしてい
ます。また、サワー原油や石炭・鉱石から出る硫化物による酸性腐食環境効果を
調べる過酷環境疲労試験装置も設置されています。
写真2 長期間腐食疲労試験装置
当所では、現在、本実験棟において予備的な試験研究として「船体の安全性 評価に関する調査研究」に取り組んでいますが、来年度からは、「船体の寿命評 価技術に関する研究」を計画しています。これらの研究は、民間ではあまり行わ れていないもので、船舶技術研究所は、今後、本施設を活用し、国立研究機関と しての先導的役割を果たして行く所存です。