船舶技術研究所ニュース № 12

SRI NEWS

施設紹介シリーズ

海洋開発工学部 海洋構造物試験水槽新台車


海洋構造物試験水槽は、1 9 7 8年に建造されて以来、半潜水式海洋構造物、超大型浮体式海洋構造物及び海洋構造物を建設するための作業船等について波の中での応答性能等を調べるための模型試験に使用きれてきました。これまで、この水槽には試験模型を取り付けて、円弧状のレールの上を回転する架台が備えられていましたが、昨年8月に、模型を波に向かって直進、斜行、旋回させたり、動揺させたりする試験をコンピューター制御によって、精度良く行うことのできる新しい台車が導入されました。試験水槽は、図に示すように長さ40m、幅27.1m、水深0~2mまで自由に設定できます。また、付帯設備として波を起こす装置、消す装置、また、水槽前面にわたって流れを発生させる装置があります。
この新しい台車の特長としては、次の3項目をあげることができます。
(1)コンピュータ制御の走行副台車があり、模型船を直進、斜行、円弧状、正弦波状に航行及び動揺させることができます。また、あらかじめ作成した複数の運転パターンののデータを自動的に連続して呼び出し運転させることもできます。
(2)自航する模型船を追尾しながら計測ができる自動追尾機能が走行副台車についています。
(3)固定された浮体を強制的に動揺させる試験や波の力を調べる試験を行うための固定副台車が走行副台車とは別にあります。走行副台車は軽量構造で作られており、高速度で軽快に動かすことができます。また、固定副台車は低速で移動することしか出来ませんが、剛な作りになっており、大型模型を固定して波の力を計測したり、強制動揺させて水から受ける反力を計測することに適しています。
新台車の主な性能は次のとおりです。
・主台車:高さ5mのアーチ型骨組構造で、そのスパンは27.6mとなっています。水槽の長さ方向に秒速2mの速さで走行出来ます。
・走行副台車:2m×2mの計測床に直径1.5mのターンテーブルを備えています。このターンテーブルは1.5m動かすことも出来ます。
・固定副台車:5.6m×2.5mの計測床に直径2mのターンテーブルを備えています。このターンテーブルは上下に1.25m動かすことができます。また、計測床には長さ1mの作業台がついています。
海洋構造物試験水槽は、建造から約20年を経て、これまでに海上空港をはじめとする大型の浮体式海洋構造物の実験などで多くの成果を産み出してきましたが、新たに最近のニーズをカバーするための多機能な性能を持った曳引台車が備わったことにより、今後は海洋構造物の研究はもちろん船舶の操縦性能の研究等においても、より精度の高いデータが得られるものと期待されています。
図: 海洋構造物試験水槽新台車の概要

写真:海洋構造物試験水槽