船舶技術研究所ニュース № 14

SRI NEWS

施設等紹介シリーズ

大阪支所 

 大阪支所は、大正9年に逓信省管船局船用品検査所大阪支所として大阪市西区に設置されて以来、一貫して船用品の検査・研究を行ってきました。戦災による移転を経て、最終的に現在地の大阪府交野市に落ち着いたのは昭和46年3月でした。それ以来すでに26年余が過ぎています。この間、船用品の検査業務中心から次第に研究業務中心へと移行してゆき、現在に至っています。
 大阪支所の研究は、艤装関係の研究と船体用材料の研究の2つに大別できます。大阪支所の設立が、関西地区に多くの造船所、船用品メーカーが集まっていることに由来していることを考え、こうしたメーカーからの要望をふまえた研究を行うよう努力しています。以下では、大阪支所で行っている研究を、研究施設との関係で紹介します。

 遠くからでも目立ち、大阪支所のシンボルともなっているのが高さ18mの落下塔(写真参照)です。塔の下には、縦横10mのプールがあり、各種の船用品の落下試験を実施してきました。最近では船舶用の避難シューターの脱出実験を行いました。脱出時に被験者が受ける最大加速度の精度の良い測定法や、シューター自体の性能評価法の開発を行いました。

 船用品の性能を知るには、その耐久性、耐振動特性を測定する必要があり、そのための各種の環境試験装置(塩水噴霧、温度交番等)、電磁式の振動試験装置(垂直又は水平、最大搭載重量500kg)があります。

 バルブは配管系で大量に使われる重要な船用品のーつですが、このバルブの耐圧試験や漏れを試験する装置があり、有限要素法による応力・変形計算結果の検証や、開発したバルブの漏れ試験などに使われています。

 電磁波用のシールドルームはEMC(電磁的両立性、電磁気による生涯をなくすこと)の研究用施設で、妨害電磁気ノイズに対する航海計器の反応を測定することが出来ます。EMCの研究は、大阪支所の研究の柱の一つで、本号「研究紹介」にインタビュー記事がありますので、そちらを参照して下さい。

 環境保全関係の研究では、海洋の油汚染対策や大気中に放出されるCO2の深海貯蔵の研究を実施しており、各種の装置があります。特に、水深6000m級回流水槽(写真参照)は、大阪支所の装置でCO2の深海大量貯蔵に関して、世界的な注目を引く成果をあげつつあります。

 船体用の材料に関する研究は、主としてFRP(繊維強化プラスチック)を対象として行っています。FRPには、強化材の種類と使い方、樹脂の種類によって、実に様々なものがあり、これらを試作し、試験材としています。FRP素材だけでなく、素材と補強材を組み合わせて小型船の構造体とした場合の、工作法、引張、圧縮、曲げ、衝撃、疲労の各種強度、欠陥の検査法、最適構造決定法などの研究を行っており、そのための試験装置として、超音波試験装置、材料試験機、落錘衝撃試験機、大変位疲労試験機(写真参照)があります。当然ながら現在の装置は、ほとんどがコンピューター制御になっており、また試験で得られた膨大なデータの整理、解析にもコンピューターが使われています。

 EMCの実船での計測、試作弁の試験、新構造FRP船の建造では、民間、大学、関連業界との共同研究を進めると共に、得られた成果はインターネットを通じて、広くPRする事に努めています。大阪支所紹介ホームページはhttp//www.srimot.go.jp/osaka/です。


           
落下塔及び水槽   水深6000m級回流水槽    大変位疲労試験機