船舶技術研究所ニュース № 24

SRI NEWS

プロジェクト紹介 Project research

 新形式メガフロートに関する研究


 横須賀沖に係留されていたメガフロートにおいて一昨年の防災拠点としての実験に続き、昨年は、航空機の離発着実験が行われました。また最近では、実証実験を終えたメガフロートが幾つかのブロックに分割され地方自治体等で利用されようとしていることが報道されるなど、大型の海洋構造物が注目されています。
このような中、次世代タイプの超大型海洋構造物を研究している海洋開発工学部のグループから話を聞きました。



写真1 前列左より 正信運輸施設整備事業団派遣研究員 加藤計測研究室長 大川運動性研究室長
後列左より 難波科学技術特別研究員
前田運輸施設整備事業団派遣研究員
矢後主任研究官


Q:どのような背景で研究されているのですか。

A:日本は、国土も狭く、その狭い土地もすでに高度に利用されています。このため、埋め立てなどにより新たな土地を作り出して利用しています。さらに新たに利用できる空間として海洋が注目されており、この海洋空間を有効に利用するための手段として、海洋構造物への期待が高まっているところです。メガフロート技術研究組合が実施している実証実験では、横須賀沖に係留されているメガフロートに実際の飛行機が離発着に成功するなど、その実現に向けた期待が、現実味を帯びて大きくなってきているところです。
しかしながら、現在のポンツーン型のメガフロートは、湾内や防波堤で囲まれた静かな海域での使用を想定しています。そこで、より自由に設置海域を選べるようにしようと、運輸施設整備事業団の運輸分野における基礎的研究推進制度(新形式メガフロートに関する技術分野)に大学やメガフロート技術研究組合などと共同で応募し、事業団と共同研究を実施しています。






Q:船研ではどのような研究を実施しているのですか。

A:「セミサブメガフロート実用化のための基礎研究」と「エコフロート(波エネルギー吸収機構を備えた自然エネルギー利用型沖合メガフロ-ト)に関する基礎研究」の2つのテーマを大学やメガフロート技術研究組合などと共同で研究しています。




図1 海洋構造物の形式と特徴


Q:もう少し具体的に教えてください。「セミサブ・・・」の研究ではどのような研究をされていますか。

A:セミサブタイプの海洋構造物は 波の影響を受け難いんです。そのため、波浪の大きな海域にも設置可能な海洋構造物を作ることができます。
当所では、離島などを想定した沿岸空港モデルの研究を実施しています。離島などでは大きな湾の存在も期待できないし、ましてや長大な防波堤を作ることも困難な場合が多く想定されます。このような場所でも設置できるようなものを、シミュレーションと模型を使った水槽実験の両面から検討していて、沿岸空港モデルのコンセプトが固まりつつあります。




写真2  模型を使った水槽実験の様子


Q:「エコフロート・・・」では、どのようなことをされていますか。

A:海洋構造物の設置海域が広がるということは、波浪の大きな海域に出ていくとともに沿岸からの距離も遠くなります。そうすると、メガフロート上で生活していく上でのライフラインを陸上から引くことも大変なこととなります。
そこで、波が大きいということを逆に利用し、波のエネルギーを吸収しエネルギー源として利用することを検討しています。また、太陽光や風、さらにはメガフロート上で排出される廃棄物なども併せてエネルギーとして利用し、エネルギー自給の可能なメガフロートを考えています。
これを「エコフロート」と呼んでいます。
エコフロートでは、メガフロート本体に与える波の影響を小さくするために、本体の周りに波のエネルギーの吸収機構を持つ浮体を設置することを考えています。それとともにこの浮体に本体を係留するための機能も持たせることとしています。
当所では、この係留消波浮体の研究とエコフロートプロジェクトの取りまとめを担当しています。
これまでに係留消波浮体の概念や係留消波浮体を用いた新しい係留方法などが得られてきていて、これらを成果として発表できる日も近いと思っています。


Q:将来的にはどのように利用されていくのでしょうか。

A:従来型のメガフロート、今日お話ししたセミサブタイプやエコフロート、また、自然の地形を利用するタイプなど様々なタイプのメガフロートが、現在研究されています。
将来的には、設置場所や使用目的にあったメガフロートが、様々な場所で利用されるようになると良いですね。先ほど話に出た離島用の空港や、高度な空港と港湾の両機能を持ち合わせた世界的なハブ機能を持ったデュアルポートなど、いろいろな可能性が広がっています。




図2 新形式メガフロートの利用例