海技研ニュース № 3

NMRI NEWS

プロジェクト紹介
 ビデオカメラを用いた船載波浪計測システムについて

海洋の波浪は船舶の経済性と快適性を低下させるだけでなく、荒天時には機器・積荷の損傷や海難事故の原因にもなります。従って、波浪情報は船舶の設計と運航にとって非常に重要です。また、波高の長期変動や大気・海洋間の二酸化炭素等の移動など、地球環境を把握する上でも重要な情報となります。
人工衛星の発達により、近年では広範囲におよぶ波浪の機械計測が可能となりました。しかし、常時計測できるのは波高だけであり、上に述べた目的のためには不十分と言えます。一方、従来から行われている一般商船からの目視観測は、精度やばらつきの点で問題がありますが、波高とともに波周期や波向も併せてリアルタイムに観測できます。従って、目視に代わる波浪計測システムができれば、いろいろな目的で有効利用が可能となります。船舶からの波浪計測法は種々考案されていますが、精度、安定性、情報量、価格等の面から一長一短があり、その一部が調査研究に利用されるに留まっています。
そこで当所では、運輸施設整備事業団の「運輸分野における基礎的研究推進制度」により、日本大学及び東京商船大学と共同で、平成11年度より船載波浪計測システムの開発を行っています。本システムは市販のビデオカメラで撮影された船側の画像を処理して相対水位変動を求め、そこに含まれる船体運動の影響を補正して波浪情報を取得しようとするものです。画像処理では、近赤外光を利用して夜間計測を可能にする等、全天候型の処理手法を研究しています。また、船体運動を補正して真の波浪情報を抽出する手法として、すでに研究例のある船体運動から波方向スペクトルを逆算する手法の応用を検討するとともに、波浪の主要パラメータの簡易推定法を開発しました。現在はこれらの手法の組み合わせや、解析に利用する計測量の選択について検討を行っています。さらに、本システムの有効利用を図るため、船上操船支援システムのプロトタイプを作成する他、波浪情報の収集システム、海象予報への利用法等についても提案を行います。