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22<>2013/01/04<>年頭挨拶<>
平成25年1月4日


年頭挨拶


独立行政法人 海上技術安全研究所

理事長 茂里 一紘


 昨年は年末に政権交代がありました。新しい政権のもとで迎える平成25年が経済活力の回復はもとより、国際的にも存在感ある日本となることを期待しております。
 海上技術安全研究所は、技術イノベーションによる新しい技術境地の開拓こそが経済の活性化に重要であるとの認識のもと、船舶、海洋、舶用機関、安全など、海事技術に関するナショナルセンターとして本年も引き続きその社会的任務を果たしていく所存です。

 昨年、「海技研の6つのコア技術」を新たに設定しました。これらの技術によって中長期的に社会に貢献していくという宣言であります。中でも、環境(先進的省エネ船型・装置の開発と排気ガス規制対応など)、海洋開発(海底資源開発技術や洋上風力発電など)および海上輸送の安全(海難事故解析と事故防止など)の3つを特に力を入れて取り組む課題としました。これらの課題に関しては、昨年、掃気バイパスによる空気潤滑装備船の試運転、スパー型浮体方式2MW発電装置の五島沖小規模試験機の運転開始、そして資源掘削のための採掘要素技術試験機の1,600m海域での実験実施、また海底土のセシウム134・137濃度の連続計測の成功など、実海域での検証実験で研究開発成果を確認することができました。

 昨年末、「国土交通省技術基本計画」が策定されました。そこには7つの重点プロジェクトが取り上げられております。そのうち、「安全・安心」、「海洋フロンティア」、「グリーンイノべーション」の3つの重点プロジェクトで海技研のかかわりが期待されております。これらは、海技研として特に力を入れて取り組んできた課題そのものです。技術基本計画は本年度からの5カ年の基本計画ですが、海技研としてはこれまで以上に国の政策とも連動して研究開発に力を入れて取り組んでいきます。

 本年も重点研究を中心に研究開発を推進することになりますが、上記3つの重点プロジェクトに関連して申し上げれば、「グリーンイノべーション」に関しては、今年1月1日からEEDIが適用されます。昨年から、新船型開発の専門組織としてEEDIプロジェクトチームを設けて対応して参りました。またEEDIの導入を船舶性能の改善目標の達成とともに我が国の造船技術力を高める機会とするという信念のもと、民間企業の技術者にも研究所で直接研究開発に携わって頂けるようオープンラボ制度を設けました。海技研で長く取り組んできたCFD技術を新船型開発にふんだんに活用するなど、海技研の持つ高度な技術力を生かし、海事産業セクターが必要とする高い目標に確実に対応していく所存です。そのためにも今年は取り組み体制を一層強化します。

「海洋フロンティア」については、今年は五島沖に加え、福島沖など洋上風力発電の本格的な設置が予定されております。海洋再生エネルギー研究開発支援プロジェクトチームをコーディネーターとして海技研挙げて取り組み、設置浮体に関する研究開発とともに基準・マニュアルづくりに取り組みます。


「安全・安心」に関しては、海底土のセシウム濃度計測をさらに広範かつ精緻に実施することにしております。東日本大震災以来、大学等における原子力工学分野の人材育成が急速に減少してゆく中、海技研にはこの分野での技術集積に関しても注目すべきものがあります。原発が今後どのようになるにしろ、放射性物質の管理・輸送に関する技術は必要です。海技研としてはこの分野の技術を堅持し、必要とされる技術に対応していく所存です。
 また、海難事故解析についてはこれまで同様、現場調査・実海域再現水槽における実験・操船リスクシミュレータによる再現の3つの取り組みによって事故解析の高度化を図り、事故防止に貢献して参ります。

 研究所の原資は研究技術力です。理事長就任以来力を入れてきたことは海技研の研究技術力の強化です。引き続き、人的対応や施設整備に力を入れていきます。技術ソルーションを社会に提供することにより、海事セクターにおけるナショナルセンターとしての役割を果たしていく所存です。


関係の皆様方のご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。


<参考> 
国土交通省技術基本計画・重点プロジェクト(「国土交通省ホームページリンク」より)
 I. 災害に強いレジリエントな国土づくりプロジェクト
 II. 社会資本維持管理・更新プロジェクト
 III. 安全・安心かつ効率的な交通の実現プロジェクト
 IV. 海洋フロンティアプロジェクト
 V. グリーンイノベーションプロジェクト
 VI. 国土・地球観測基盤情報プロジェクト
 VII. 建設生産システム改善プロジェクト