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151<>2014/07/30<>EEDIの実海域係数で認証、NKから世界初<>
平成26年7月30日
北日本造船株式会社
独立行政法人 海上技術安全研究所


EEDIの実海域係数で認証、NKから世界初
ケミカルタンカー竣工、GHG削減に期待


 北日本造船株式会社(代表取締役社長 東徹、青森県八戸市)は当研究所と共同でケミカルタンカーの船型開発を行い、船舶の燃費性能指標「EEDI(エネルギー効率設計指標)」に実海域の海象を考慮したEEDIweatherについて、一般財団法人日本海事協会(会長 上田德、東京都千代田区)から世界で初めて認証を取得しました。同船型で建造されたケミカルタンカーが7月29日、竣工しました。実海域の海象も設計指標に取り入れて開発された船舶は、外航海運での温室効果ガス(GHG)を削減する効果があると期待されています。

 外航海運から排出されるGHG削減のため、国際海事機関(IMO)は新造船に対するEEDI規制を、海洋汚染防止(MARPOL)条約の一部改正として、2013年1月に発効させました。EEDI規制は波や風のない静穏海面での設計指標ですが、実際の船舶は波や風の影響を受けて運航され、速力も低下して燃費も悪くなります。
 そのため波や風がある代表的な海象での速力低下係数(fw)をEEDIに取り入れた数値、EEDIweatherを記載させるための暫定ガイドラインをIMOは承認しています。代表海象でのfwを計算するためのガイドライン策定には、当研究所の研究成果も取り入れられています。
 北日本造船は当研究所と共同で開発したケミカルタンカー船型で波浪中水槽試験を行い、fwの値を算定しました。開発に取り組んだケミカルタンカーは19型(載貨重量1万9,950トン)と、NKの「業界要望による共同研究」のスキームによる研究支援を受け,一般社団法人日本中小型造船工業会を含めた4者の共同研究により開発した35型(載貨重量3万5,000トン)の2船型で、7月23日、NKからEEDIweather の認証を世界で初めて取得しました。
 同船型で建造した19型ケミカルタンカー「CHEM HOUSTON」(ケミ・ヒューストン)が7月29日、北日本造船八戸本社工場で竣工しました。同船型は現在20隻の受注があり、その第1船になります。残る19隻も、順次建造していきます。
 なお同船は、省エネ装置として、新開発のダクトを装備していることも特長です。このダクトは、プロペラとダクトの間の干渉効果を高めるため両者を近接させ、また小直径とすることでキャビテーションの発生を減少させるものです。省エネダクトとプロペラを一体設計することで流体性能の最適化を行うことができます。平水中の水槽試験では、約5%の馬力低減効果が得られることを確認しています。

写真は、ケミカルタンカー「CHEM HOUSTON」(ケミ・ヒューストン)
【主要目】全長:145.0m、全幅:24.2m、夏期満載喫水:9.77m、載貨重量:19,950t、
船級:NK、竣工:平成26年7月29日