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155<>2014/08/05<>衝突安全性に優れた造船用鋼板「NSafeR-Hull」を世界初の実用化<>
平成26年8月5日
新日鐵住金株式会社
今治造船株式会社
独立行政法人海上技術安全研究所


衝突安全性に優れた造船用鋼板「NSafeR-Hull」を世界で初めて実用化


 新日鐵住金株式会社(代表取締役社長 進藤孝生、以下「新日鐵住金」)が開発した、衝突安全性に優れた高延性造船用鋼板「NSafeR-Hull(エヌセーフ ハル)」が、今治造船株式会社(代表取締役社長 檜垣幸人、以下「今治造船」)、当研究所との実用化に向けた共同研究を経て、この度、世界で初めて株式会社商船三井の船舶(ばら積み船)に採用され、8月2日に進水いたしました。

 高延性造船用鋼板「NSafeR-Hull」は、従来の施工性を維持しながら、高い延び性を有することにより、船舶の衝突安全性を高めることができる新しい鋼板で、新日鐵住金が成分設計と結晶粒レベルの組織制御を行い、開発致しました。
「NSafeR-Hull」は鋼板の延びに優れる為、船舶に適用した場合、船舶の側面から衝突された際に穴が開くまでの衝撃吸収エネルギーが約3倍となります。これによって、従来の鋼材に比べて船体に穴が開きにくくなります。これは鋼板の延び性と船舶の衝突安全性に関する3社での共同研究の結果、実現したものです。
 今回実用化された船舶には、貨物倉船側部、燃料タンク部などの高い衝突安全性が求められる場所に、合計約3,000トンの「NSafeR-Hull」が採用されています。船体に穴が開きにくくなることにより、浸水防止や貨物保護、深刻な環境汚染につながる油流出の防止の役割を担っています。

 今後は、一般財団法人日本海事協会(以下「NK」)の「業界要望による共同研究」スキームによる支援を受け、更に高度な解析を実施していく予定です。また、NKでは、本船のように安全性を高めた船舶に対し「ノーテーション(船級符号への付記);識別表示」を付与し、船舶の安全性向上を推進することを検討しています。

 新日鐵住金、今治造船、海技研は、「NSafeR-Hull」の幅広い船舶への適用を通じて、今後とも安全で確実な海上輸送の実現に貢献してまいります。

【ばら積み船の概要】
載荷重量:206,600トン、
サイズ :全長299.94メートル、幅50.00メートル、深さ24.70メートル
建 造:今治造船株式会社 西条工場
船 社:株式会社商船三井
進 水:2014年8月2日
NSafeR-Hull使用量:約3,000トン

  左から図2:NSafeR-Hull採用部位(赤色および黄色部分)、図3:NSafeR-Hull採用部位(赤色部分)、図4:船舶の側面衝突(概念図)