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246<>2015/10/06<>船舶用エンジンでパーム油燃料の国際共同実験を開始<>
船舶用エンジンでパーム油燃料の国際共同実験を開始


 国立研究開発法人 海上技術安全研究所(理事長 茂里一紘)は、パーム油(やし油)燃料を使った国際共同実験を開始しました。2013年に包括連携研究協定を締結したインドネシア技術応用評価庁(BPPT)と、インドネシア産パーム油を船舶用エンジンの燃料として使用した燃焼実験を開始したものです。今回の実験には、国内のエンジンメーカー、大学も参加します。

 インドネシアでは、地球温暖化対策及び国産燃料の使用としてパーム油を重油や軽油に混合したバイオ燃料の使用が政府により進められています。特に、我が国と同様1万7000の島からなる島嶼国であることから、船舶用燃料としての使用が注目されています。今回の国際共同実験は、インドネシア政府が、2020年から30%の混合(B30)の使用を強制化するための実用化研究を進めているBPPTと、船舶用エンジンで研究力を持つ海技研が海技研内の船舶用エンジンを使用して共同研究を行うものです。

 実験は、10月5日から開始し、BPPTの研究者も参加し、約1カ月にわたり、B30(30%混合)、B50(50%混合)、B100(100%)、CPO(生パーム油)の燃焼実験を行うほか、B30の100時間耐久試験を実施します。インドネシア産パーム油を、船舶用エンジンで使用する大規模な燃焼試験は、世界初です。

 インドネシアは、マレーシアと並ぶパーム油の大生産国で、年間3000万klが生産されています。現在は、食用油や洗剤用原料としての使用が中心ですが、バイオ系燃料では最も生産量が大きいことから、今後は燃料としての使用を増加させることとされています。また、パーム油などのバイオ燃料は、10%混合すればCO2排出量が10%削減(カーボンニュートラル)とみなされ、また、硫黄分が無いため排気ガスがクリーンな燃料として注目されています。

 実験に参加しているのは、インドネシアへ船舶用エンジンを供給しているダイハツディーゼル株式会社、新潟原動機株式会社、ヤンマー株式会社、参加する大学は国立大学法人九州大学で、バイオ燃料の燃焼技術や排気ガスの研究で実用化を支援します。
 海技研はインドネシアの環境政策に協力し、国際貢献を進めています。

(注)
①BDF(Bio Diesel Fuel:植物由来の油や廃食用油からつくられるディーゼルエンジン用燃料の総称):パーム油の使用ではメチルエステル化処理して、燃料として使用しやすくし重油、軽油に混合する
②CPO(Crude Palm Oil:生パーム油):パーム椰子の種を絞ったもの


写真左:燃焼実験に用いているエンジン
写真右:BDF(左側)と食用に精製したパーム油(右側)