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259<>2015/11/20<>インドネシアの舶用燃焼技術、造船技術を支援<>
インドネシアの舶用燃焼技術、造船技術を支援
同国の国立研究機関、工科大と協議


 国立研究開発法人海上技術安全研究所(海技研、理事長:茂里一紘)は、インドネシアの地球温暖化対策と国産燃料の使用政策、造船技術の向上を研究面で支援するため、茂里理事長をはじめとする代表団を11月23日からインドネシアへ派遣します。同国では、研究技術省傘下のインドネシア技術応用評価庁(BPPT)とスラバヤ工科大学を訪問し、今年から開始した環境研究の進捗状況の報告と今後の協力の進め方について話し合います。

 インドネシアは、1万7000という世界最多の島嶼国であり、多数の船舶による輸送が必要です。このため、インドネシア政府は、経済発展につながる安全環境面の向上を含めた海上輸送の近代化政策を推進しています。同国はまた産油国ではありますが、近年石油需要が増加し、石油輸入国となり、国内産のバイオ燃料の使用を推進しています。

 こうした状況により、カーボンオフセットとしてCO2排出量がゼロと見なされる自国産パーム油や、CO2排出量が少ない自国産天然ガス燃料を船舶燃料としての利用を研究しています。さらに、島嶼間の輸送に従事する船舶の近代化や世界有数の海底資源の資源開発技術の向上について、わが国に協力を求めています。

 海技研は、2013年にBPPT及び同国唯一の造船学部をもつスラバヤ工科大学と包括連携研究協定を締結しました。協定に基づき、今年は、EEDI国際ワークショップでの講師としての招聘、インドネシア産のパーム油を海技研のエンジンで燃焼する共同実験を実施しています。同実験では、排気ガスの測定や船舶燃料としての使用可能性のデータを取得しました。今回の訪問では共同研究会を開催して実験結果について協議します。また、BPPT議長との懇談や、インドネシアでの船舶燃料として天然ガスを燃料として利用する研究協力についても協議します。

 さらに、BPPTから海技研に今年寄せられた、船舶海洋技術開発に関する研究人材育成の要請について、具体的な協議を行います。海技研はBPPTの研究者・技術者を受け入れて研修を行うとともに、日本の研究者が現地で講義するなど連携協力の実施方法について協議調整を行います。
 BPPTおよびスラバヤ工科大学は、政府の政策を技術面で支えており、海技研との研究連携は、今後、同国の海運、造船、海洋開発政策面での日本の技術の活用に繋がっていくものと期待されます。


参考:
①インドネシア技術応用評価庁(BPPT:Badan Pengkajian dan Penerapan Teknologi)
 は、船舶、エネルギー、情報、食品などの総合研究機関。研究者・技術者総数1400人、
 船舶部門の試験水槽は日本の技術援助で建設されました。
②スラバヤ工科大学は、同国で唯一、造船学部(学生数約2000人)をもつ工科大学で、
 造船学部は造船、舶用機械、海洋開発、海上輸送の4学科からなります。
③パーム油は、パーム椰子から採取するバイオ燃料です。世界で約6000万klが生産さ
 れていますが、90%はインドネシアとマレーシアで生産されています。インドネシアは
 約3000万klを生産しており、その量は日本の軽油(トラックなどの燃料)の年間消
 費量に相当します。

写真左:バイオ燃料を燃焼試験中のエンジン
写真右:BPPTとの連携協定締結(2013年11月6日、左から茂里海技研理事長、
    BPPTのMarzan A.Iskandar議長(当時))