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303<>2016/06/06<>スーパーカミオカンデ/ハイパーカミオカンデ機器作動確認<>
スーパーカミオカンデ/ハイパーカミオカンデ機器作動確認
素粒子物理学の研究に一役


 5月20日、海上技術安全研究所において、世界最大の地下ニュートリノ観測装置であるスーパーカミオカンデで用いる装置の動作を確認する実験が行われました。
 スーパーカミオカンデは、東京大学宇宙線研究所(所長:梶田隆章教授)の施設で、岐阜県飛騨市の地下約1,000mにある約5万トンの超純水を蓄えた直径39.3m、高さ41.4mの円筒形タンクと、タンク壁面に設置された約12,000本の光電増倍管と呼ばれる光センサー等から構成されています。

 その目的の一つは、ニュートリノの性質を明らかにすることで、1998年にはニュートリノ振動を発見するなど、多大な成果を挙げています。これらの研究成果により、2015年には梶田隆章教授がノーベル物理学賞を受賞されました。また、物質に働く4つの力のうち3つをまとめて説明する大統一理論では、陽子が崩壊することが予言されていますが、スーパーカミオカンデでは、この未発見の陽子崩壊現象の探索も行っています。
 今回の実験は、スーパーカミオカンデの光電増倍管の較正を行う機器(γ線線源)を、自動で昇降させる自動較正装置の動作を確認する目的で実施されました。

 スーパーカミオカンデではニュートリノ反応などからの、たいへん微弱な光をもちいて観測をおこなっています。そのため観測中の検出器内に外界からの光を入れることは許されません。現在の較正作業では、暗室の使用などの多大な労力が必要とされています。

 自動化が成功すれば大幅な省力化が可能となるとともに、スーパーカミオカンデの稼働率の向上にも資することが期待されます。なお、この自動較正装置の技術は、現在、2026年からの実験開始を目指しているハイパーカミオカンデ(直径74m、高さ60mの水槽2基に52万トンの超純水を蓄え、約40,000本の光電増倍管を備える)の較正にも用いられる予定です。

 実験は、研究所の深海水槽(最大水深35m)で、東京大学宇宙線研究所の共同研究機関の一つである神戸大学の鈴木州(助教)、矢野孝臣(特命助教)、阿部圭悟(大学院生)と、自動較正装置制作会社の北森康雄(ユニバース電機)が実施しました。研究所では海洋開発系の深海技術研究グループが実験に必要な技術指導・協力等を実施しました。また、試験体の水中での挙動を3次元で計測できる装置を用い、今後の機器開発に向けたデータの提供を行いました。

スーパーカミオカンデについては↓
http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/sk/

ハイパーカミオカンデについては↓
http://www.hyper-k.org/


写真
①深海水槽と較正装置
②較正装置の設置作業状況
③ 光電増倍管較正線源を模擬した錘(青色の球形)