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329<>2016/12/21<>長尺平板高精度抵抗計測装置を開発<>
長尺平板高精度抵抗計測装置を開発
世界初、新方法で大型模型の摩擦抵抗評価が可能に


 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所(大和裕幸理事長) 海上技術安全研究所(大谷雅実所長)と中国塗料株式会社(植竹正隆社長)は、長さ14mの長尺平板を用いて摩擦抵抗を高精度に計測する装置を世界で初めて開発しました。装置の開発により船体表面の粗度形状特性と摩擦抵抗の関係解明が大きく促進することが期待でき、摩擦抵抗の少ない塗料の開発が進むものと期待できます。この研究は、国土交通省の「次世代海洋環境関連技術開発支援事業」及び一般財団法人日本海事協会の共同研究テーマ(船体塗膜粗度低減と粗度パラメーターから実船摩擦抵抗変化率を推定する方法の研究)として実施しました。
 船舶の抵抗のうち、造波抵抗、粘性圧力抵抗は、船型の改良に伴い、その比率が小さくなり、摩擦抵抗の割合が大きくなっております。そこで船舶の省エネ化を図るため、摩擦抵抗の低減が課題になっています。摩擦抵抗低減の手段として、低摩擦抵抗塗料の開発と実用化が進んでいますが、摩擦抵抗を精度よく計測する装置がありませんでした。
 開発した装置は、繰り返し試験のばらつき(分布)が0.1%以下という極めて精度が高い装置です。この高精度は、長尺平板と二重ブランコとフロートを組み合わせた曳航装置による世界初の方法により達成されました。
 14m長尺平板高精度抵抗計測装置を用いた試験は、12月2日に開催されました「海上技術安全研究所100周年記念講演会」における施設見学会で披露されました。

ご参考:14m長尺平板の試験
 14m長尺平板(全長14.43m、厚み1cm、喫水0.81m)は薄くて長いため、波を発生し難く、摩擦抵抗を精度よく評価することが可能です。この試験のために、新しく曳航試験装置を開発しました。
 アルミニウム製平板には浮力がなく、平板を浮かせ、転覆しないようにするため、左右両舷にフロートを設置しました。平板は両側のフロートからブランコで吊り下げられる構造であり、平板にかかる力のみを計測できます。さらに無塗装の滑面平板と、舶用塗料を塗装した塗膜平板の計測を行うことで、形状抵抗や造波抵抗、フロートの干渉等の影響を排除し、塗膜面の摩擦抵抗の違いを評価できます。
 試験は、海上技術安全研究所の400m水槽で、最大曳航速度4m/sで実施しました。滑面、塗膜面ともに繰り返し試験の結果が0.1%以下の範囲に分布し、計測精度が極めて高いことが証明されました。
 海技研は、これまで2mの平板試験の結果からの仮説により推定法を考案してきましたが、2mの平板と全長100m~300mの実船の中間となる、14m長尺平板の試験を実施することで、より実船に近い環境を再現しての試験が可能となり、推定法の精度が向上することが期待できます。

(写真)14m長尺平板試験の様子