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366<>2017/05/18<>益田上席研究員/高橋グループ長/西尾上席研究員がJIMEから論文賞受賞<>
益田上席研究員/高橋グループ長/西尾上席研究員が
JIMEから論文賞受賞

 当所環境・動力系の益田上席研究員、高橋グループ長及び西尾上席研究員は、日本マリンエンジニアリング学会(JIME)から論文賞を受賞しました。湿式SOxスクラバーの洗浄水排出の際にモニタリングが義務づけられている、濁度と多環芳香族炭化水素(PAH)濃度に関し、スクラバーと舶用ディーゼルエンジンの運転条件を変え、詳細な計測を行いました。計測原理の異なる濁度計を比較するとともに、排ガス中の黒色粒子が洗浄水に懸濁した条件下での、正確なPAH計測に関する研究が評価されました。

<受賞論文>
湿式スクラバーの水質モニタリング法の検討
―濁度と多環芳香族炭化水素について
著者:益田晶子、高橋千織、西尾澄人

<研究内容>
 舶用ディーゼル排ガスから有害な硫黄酸化物(SOx)を除去する湿式スクラバーでは、排ガスに含まれる黒色粒子やPAHも一部除去され、洗浄水中に懸濁・溶解する。そのため、洗浄水を船外に排出する際には濁度とPAH濃度計測が義務づけられている。この濁度計測(光散乱測定)やPAH濃度計測(蛍光測定)は、光学的手法を用いるため、スクラバー洗浄水に懸濁している粒子の色や大きさの影響を受けると考えられる。そこで本研究では、その懸濁粒子の影響を系統的に調べるため、エンジンおよびスクラバーの運転条件を変え、濁度およびPAH濃度計測をおこなった。計測方式の異なる複数の濁度計を用いて濁度を比較したところ、90°散乱光のみを計測する方式では高濁度時に正確な計測値が得られない一方、着色分子の影響を補正するレシオ方式では比較的高濁度まで正確な計測が可能であることが明らかになった。またエンジン負荷率を変えた場合や、スクラバー洗浄水の循環流量を変えた場合の濁度の変化から、濁度は懸濁粒子量だけでなく粒径にも依存することが示唆された。さらにPAH濃度計測における懸濁粒子の影響を検証し、濁度計測値を用いた数値的なPAH濃度計測値補正が有効であることを示した。

写真は左から
西尾上席研究員、益田上席研究員、賞雅寛而JIME会長、高橋グループ長