プレスリリース

PRESS RELEASES

平成30年3月30日
国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所
一般財団法人日本船舶技術研究協会

水素燃料電池で航行する船舶の実船試験を実施
~ 国土交通省の水素燃料電池船の安全ガイドラインの検討に貢献 ~

  • 海技研、船技協及びヤンマーからなるコンソーシアムは、平成30年2月から3月にかけて、広島県因島沖において水素燃料電池で航行する船舶の実船試験を実施し、燃料電池船に搭載する蓄電池システムに求められる安全要件の妥当性を確認しました。
  • 本試験は、国土交通省より受注した「水素燃料電池船の安全ガイドライン策定のための調査検討事業」において実施したもので、試験結果は、「水素燃料電池船の安全ガイドライン」の検討に貢献するため、国土交通省に提出しました。

 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所(所長:大谷雅実、以下「海技研」)、一般財団法人日本船舶技術研究協会(会長:田中誠一、以下「船技協」)及びヤンマー株式会社(本社:大阪市、社長:山岡健人、以下「ヤンマー」)からなるコンソーシアムは、国土交通省が水素社会実現に向けて2015年度から3年計画で取り組んでいる「水素燃料電池船の安全ガイドライン策定のための調査検討事業」において、水素燃料電池船の安全ガイドライン(案)の検討を行ってきました。

 これまで、燃料電池の塩害対策や動揺試験などの基礎試験を行ってきましたが、最終年度となる2017年度は、これらの成果を踏まえ、ヤンマーの研究成果である60kW級の純水素燃料電池システム及び渦潮電機株式会社の研究成果であるリチウムイオン電池システムを組み込んだ実験用システムを構築し、海技研が管理する実験船に搭載して実船試験を実施しました。

 その結果、燃料電池システムや、燃料電池船に搭載する蓄電池システムに求められる安全要件の妥当性を確認することが出来ました。海技研らは、本試験により得られた知見から燃料電池船の安全要件を取りまとめ、「水素燃料電池船の安全ガイドライン」の策定に向けて国土交通省に提出しました。

 海技研及び船技協では、将来の水素燃料電池船の実用化と普及に向けて、引き続き安全基準の整備に向けた検討や、安全性や信頼性を高めるための研究を積極的に実施していきます。

■「実験船主要目」

  • 船名:神峰
  • 船質:繊維強化プラスチック(FRP)
  • 総トン数:約17トン
  • 船舶の長さ:16.50メートル
  • 実船試験水域:広島県尾道市因島重井町串鼻を中心に半径4海里以内
  • 満載時最大速力:11.5ノット(電気推進時約9.0ノット)
  • 燃料電池システム:固体高分子形燃料電池モジュール(ヤンマー)60kW x 1基
  • 二次電池システム:リチウムイオン電池モジュール(渦潮電機)60kWh
  • 推進用電動機:IPMモータ50kW x 2基
実船試験の状況写真①(全体)

実船試験の状況写真①(全体)

実船試験の状況写真②(電気推進)

実船試験の状況写真②(電気推進)

運航支援システム※1(一例)

運航支援システム※1(一例)

パワーマネジメントシステム※2(一例)

パワーマネジメントシステム※2(一例)

60kW級舶用燃料電池システム

60kW級舶用燃料電池システム

※1 運航支援システム:操船者の負荷を低減しながら安全な運航を可能とすることを目的として、海技研が開発した操舵席から各種情報を監視するシステム。
※2 パワーマネジメントシステム:ヤンマーが構築した発電から推進まで含めて一括した最適制御が可能な電力制御システム。

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【問い合わせ先】

(実証実験に関する技術事項)

国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
海上技術安全研究所 企画部広報係
Tel:0422-41-3005  Fax:0422-41-3258 
E-mail:info2@m.mpat.go.jp
http://www.nmri.go.jp/

(調査研究全般)

一般財団法人 日本船舶技術研究協会
研究開発グループ(担当:大西、井下)
Tel:03-5575-6428  Fax:03-5114-8941