プレスリリース

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平成30年12月6日
国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所

不規則波(横波・向波)中「ばら積み貨物模型船」曳航の公開実験を実施

国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所  海上技術安全研究所(所長 宇都正太郎)は、11月21日(水)、弊所実海域再現水槽にて、大波高不規則波中におけるばら積み貨物船模型の曳航実験を公開しました。当実験では、海運・造船・舶用メーカーを中心に船舶に取り付けるセンサ等の技術開発に携わるメーカーの方など、業界から約40名(関係者含)が参加しました。実験は、大きな横揺れが発生する横波中と大きな縦曲げモーメントが発生する向波中の条件で実施し、船体6自由度運動、船首尾の上下・左右の加速度、船体に作用する断面力、波浪変動圧の計測を行いました。(波浪変動圧については、その船体表面分布を明らかにするため、300点以上の表面貼付型FBG(Fiber Bragg Grating)圧力センサを設置した多点計測にて実施)

波高の非線形影響について技術的な根拠補強の必要性も

現在、一般財団法人日本海事協会(以下「日本海事協会」と記載)により、船体構造に関する鋼船規則C編の見直しが行われています。その中の検討課題の一つとして、最新の耐航性理論を活用した船体運動、波浪荷重、変動水圧に対する波高の非線形影響の評価が挙げられます。一般に、船体運動、波浪荷重、変動水圧は、波高に対する非線形性を有していることから、船級規則に規定される大波高中の荷重においては、それらを「非線形影響係数」等の形で与えています。このような考え方自体は合理的ですが、現象の複雑さも相まって、近年の理論及び実験技術の進歩を勘案すると、係数の技術的背景が十分であるとは言い切れない側面がありました。このような背景から、様々な船型に対して波高非線形影響に関する技術的な根拠を補強すべく、日本海事協会からの請負により、弊所の実海域再現水槽を利用して不規則波環境下における模型船曳航実験を実施するに至りました。

実験から波高の非線形影響を確認

今回の公開実験に際し、日本海事協会の有馬俊朗執行役員が、協会が進める当プロジェクトの概要について、日本海事協会船体開発部の福元佑輔氏が実験の背景について、また、流体性能評価系耐航性能研究グループの宝谷英貴研究員が実験内容の説明にあたりました。また、福元佑輔氏からは、6月に実施した自動車運搬船の模型実験、および今回のばら積貨物船の模型実験を通じ、縦曲げモーメントや喫水線付近における波浪変動圧に、波高の非線形影響が確認されていることが紹介されました。特に、波浪変動圧の非線形影響の解明には、光ファイバを利用したFBG圧力センサの、「電磁ノイズの影響を受けない」、「直列に接続して同時に多点の計測をすることが可能」という特徴が報告されました。実験後の質疑応答の時間においては、業界から参加した様々な分野の方から質問が多く寄せられました。

大波高不規則波中のばら積み貨物船模型の曳航実験を公開1

向波造波による実験

大波高不規則波中のばら積み貨物船模型の曳航実験を公開2

向波造波による実験

大波高不規則波中のばら積み貨物船模型の曳航実験を公開3

説明にあたる宝谷研究員

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