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IMOは、2000年より3次にわたり、GHG排出量などに関する調査報告書を作成しており、今回が第4次報告書となります。本報告書は、IMOにおけるGHG政策の基礎データとなるものであり、削減目標のベース年(2008年)の排出量および炭素排出効率(Carbon Intensity, CI)の推計値、2050年までの排出量予測などが含まれています。今回の調査はCe Delft(オランダ)の主導する国際コンソーシアムが入札によって受託し、約半年の作業を経て、成果物として提出しました。本年秋以降に開催予定のMEPC75での審議の上、承認・最終化される予定です。
(1)海技研はゼロ/低炭素燃料の導入の重要性を示しました
GHG4のドラフトのうち、海技研では、①CO2排出削減技術(減速航行を含む)のレビューおよび②将来における削減可能量とその際のコスト評価を担当しました。具体的には、削減技術を最新の文献に基づき詳細に調査し、削減技術毎のCO2削減コストとCO2削減可能量を算定しました。そして、CO2削減技術の普及シナリオ毎に両者を積み上げた関係を示す「限界削減費用曲線(MACC)」(*4)を提示しました。その結果、ゼロ/低炭素燃料の導入なしでは2050年削減目標の達成は困難であることを示しました。なお、GHG4の最終報告書案の内容や結論はMEPC75の審議により、修正変更される可能性があります。
以下の限界削減費用曲線で説明します。削減技術はその性格や互換性などによって、17のグループに分類されており、階段状になっているそれぞれの段は、17の削減技術グループ毎のCO2削減可能量と削減コストを示しています。
この図は、すべての新造船に17グループ全てのCO2削減対策が導入されることを想定した普及シナリオ、すなわち理論上最大限のCO2削減が達成されるシナリオにおける計算結果となります。横軸は、2050年のCO2排出量に対するCO2削減可能量の割合を示しており、横軸の100%は2050年においてCO2排出量がゼロになることを意味しています。
図に示す通り、理論上最大限のCO2削減を達成する普及シナリオにおいては、横軸で約36%から100%になるまで直線が平坦に長く延びています。この平坦になっている直線は、将来の実用化が期待されるゼロカーボン/カーボンニュートラル燃料を導入することによって達成可能な削減量を示しています。このことは、2050年までに2008年比で約50%の効率改善が進むと想定したとしても、130%に増加すると予測される排出総量を、削減目標である2008年比50%以下に削減するためには、ゼロカーボン/カーボンニュートラル燃料の導入などの追加対策が不可欠であることを示しております。
(*1)報告書(MEPC 75/7/15)はIMODOCより入手可能。
https://docs.imo.org/
(*3) 日本海事協会プレスリリース
https://www.classnk.or.jp/hp/ja/press_release.aspx
<問い合わせ先>
国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
海上技術安全研究所 中村(企画部)/小坂(知識・データシステム系)/村岡(環境・動力系)/平田(GHG削減プロジェクトチーム)
住所:東京都三鷹市新川6-38-1 電話:0422-41-3061/0422-41-3699
URL:https://www.nmri.go.jp/