PRESS RELEASES
<概要>
山田安平海難事故解析センター長は、「海洋油濁防止のための耐衝突・座礁性に優れた高延性厚鋼板開発・実用化」で、第3回オープンイノベーション大賞 国土交通大臣賞を共同で受賞しました。
今回の受賞は、海上・港湾・航空技術研究所、日本製鉄株式会社、今治造船株式会社、日本海事協会の4社が共同で実施したプロジェクト及びその成果が表彰されたものです。日本オープンイノベーション大賞については、下記をご覧ください。なお、表彰式は、2月25日に都内で開催され、オンライン配信される予定となっています。
山田安平 | 国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 |
海上技術安全研究所 海難事故解析センター センター長 | |
市川和利 | 日本製鉄株式会社 鉄鋼研究所 厚板・形鋼・鋼管研究部 主幹研究員 |
小田直樹 | 日本製鉄株式会社 厚板事業部 厚板技術部 厚板商品技術室 主幹 |
紙田健二 | 今治造船株式會社 執行役員 |
船津裕二 | 一般財団法人日本海事協会 グループリーダー |
以上5名
本プロジェクトでは、船舶の衝突や座礁に起因する海洋油濁による環境破壊を防止するために、衝突されてもよく伸びることで破口しにくい「高延性鋼」を開発。当所と、日本製鉄、今治造船、日本海事協会の4社が連携し、コンセプト提案、材料開発、実機製造、認証制度およびガイドラインの公開、実船適用を実現しました。
高延性鋼(NSafe®-Hull)は、従来鋼と同等の強度と靭性を確保しつつ、延性を向上させた鋼材です。従来鋼よりも破孔発生までの衝撃エネルギー吸収量が高く、船体構造に適用することで被衝突時や座礁時における損傷の軽減に寄与します。また、延性向上は破孔抑止にも有効であり、浸水に対する船舶の安全確保にも有用であることが期待されます。高延性鋼(NSafe®-Hull)は、上記4社の共同で開発後、既に実用化されており、超大型原油タンカー(VLCC)7隻を含め既に31隻の大型船舶に適用され、油流出防止並びに船舶の安全性向上に寄与しています。
高延性鋼適用に際しては、日本海事協会より、「高延性鋼の使用に関するガイドライン(2020年9月24日)」が発行されています。
リリース文はこちら
プレスリリース
イノベーションの創出を巡る国際的な競争が激化する中で、研究開発等の成果を迅速に社会実装し、社会的ニーズの解決や新たな価値の創造につなげることが大きな課題となっています。そのための方法として、組織の壁を越えて知識や技術、経営資源を組み合わせ新しい取組を推進するオープンイノベーションが注目されています。
こうした状況を踏まえ、我が国のオープンイノベーションをさらに推進するために、今後のロールモデルとして期待される先導性や独創性の高い取組を「日本オープンイノベーション大賞」として称えることとしました。
本表彰では、オープンイノベーションの取組で、模範となるようなもの、社会インパクトの大きいもの、持続可能性のあるものについて、担当分野ごとの大臣賞、長官賞、経済団体、学術団体の会長賞等の表彰をするとともに、各賞の中で最も優れたものを内閣総理大臣賞として表彰します。
内閣総理大臣賞、科学技術政策担当大臣賞、総務大臣賞、文部科学大臣賞、厚生労働大臣賞、農林水産大臣賞、経済産業大臣賞、国土交通大臣賞、環境大臣賞、スポーツ庁長官賞、日本経済団体連合会会長賞、日本学術会議会長賞、選考委員会特別賞
日本オープンイノベーション大賞へのリンク:
https://www8.cao.go.jp/cstp/openinnovation/prize/
本発明は、国際統一規格で規定された値の1.5倍以上の全伸びを有する「高延性鋼板(NSafe®-Hull)」を使用した船殻構造により、超大型原油タンカー等の衝突時の破口発生を抑制し、甚大な環境被害をもたらす油漏洩リスクを低減するものである。
NSafe®-Hullは、上記3社に日本海事協会を加えた4社の共同で開発後、既に実用化されており、超大型原油タンカー(VLCC)7隻を含め既に31隻の大型船舶に適用され、油流出防止並びに船舶の安全性向上に寄与しています。
発明者らは、船体の構造設計変更ではなく、衝突による船舶の損傷を軽減する材料技術を経済合理性に従って検討し、適正に配置された、延性(伸び)に優れた鋼板で衝突エネルギーを吸収し、耐衝突性能の高い船体構造を発明した。現実の事故統計を踏まえた非線形有限要素法計算により、破口発生防止のための伸びの値(臨界的意義)を合理的に従来規則の1.4倍以上であると求め、大型船舶の衝突安全性の向上を実現した。本発明は、衝突に伴う人命や積荷の損失を防ぐと共に、国際競争の渦中にある日本の造船産業の競争力強化にも資することが期待されている。なお、本鋼材を使用した船舶は、申請により「先進船舶」として認定され税制優遇対象となることができる。