洋上風力発電アクセス船の風車タワー乗り移り時における稼働性評価に関する研究

Research Overview

研究概要

洋上ウィンドファームの維持・管理コストの最小化は事業化においては大きな鍵となります。その維持・管理コストの大部分は船舶経費と言われており、洋上風力発電アクセス船(Crew Transfer Vessel:CTV)に係る経費は大きなものになります。人員物資輸送するCTVから風車タワーへ技術者が乗り移るためには、船首部を風車タワーへ押し付けながら乗り移りが行われます。このような操船オペレーションは波浪中運動を抑制できる一方、通常の浮体の波浪中運動とは大きく異なることから運動予測は大きな課題となっています。このような背景から、当所では風車タワーへの乗り移り評価に関する研究を進めています。また、実験で得られた波浪中応答特性を予測するための数値計算法に関する研究についても取り組んでいます。水槽試験と数値計算を併せて活用することで、我が国の洋上風力発電が有望な海域におけるCTV最適船型の検討や稼働性評価を行うことが出来るようになります。


研究対象船と基本諸元

CTV模型と基本諸元CTV模型と基本諸元

図1 CTV模型と基本諸元


水槽試験

風車タワーへの人員乗り移り評価を行うため、CTVが船首接舷したオペレーション状態を再現した次のような水槽試験を当所の海洋構造物試験水槽において実施しました 1) , 2) 。図2に水槽試験の様子を示します。船首部を風車タワーに強く押し付けた状態でのどのような波浪中での船体運動が発生するのかを把握しました。水槽試験では波高、波向き、波周期、波のタイプ(規則波、不規則波)を変えるだけでなく、押し付け力も幾つか変えて行いました。

水槽試験の様子

図2 水槽試験の様子



試験結果の例

図3は船首部のStick/Slip現象に着目した結果です。船首部を強く風車タワーに押し付けているのにも関わらず、波高、波周期、ボラード推力によっては船首部のSlip現象が発生することが分かりました。このような現象の発生条件はCTVの船型によっても大きく異なるものと考えられます。今後は数値計算を使ったStick/Slip境界推定に関する研究についても進め、安全な乗り移り評価を行うための評価ツールを開発していきます。

乗り移り部に発生するStick/Slip現象の境界判定

図3 乗り移り部に発生するStick/Slip現象の境界判定(ボラード推力比較)(模型スケール)


発表文献

  • 大坪和久:風車タワーに船首接舷したCTVの波浪中運動評価、第22回海上技術安全研究所研究発表会、ポスターセッション(PS-14)、令和3年7月22日
  • Otsubo, K.: On the Stick/Slip Phenomenon of a Crew Transfer Vessel Pushing its Bow Against an Offshore Wind Tower During a Transfer Operation, Proceedings of 33rd International Ocean and Polar Engineering Conference, Ottawa, Canada, June 19-23, 2023. (Scheduled to be published)

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