Ship–to–Ship方式によるバンカリングオペレーションにおける安全性・稼働性評価に関する研究

Research Overview

研究概要

 国際海事機関(IMO)による環境規制が進められる中、SOX以外にCO2排出量も削減可能なLNG燃料とLNG燃料船の優位性が注目されています。国内では令和2年10月に初めてLNG燃料船に対してShip–to–Ship方式により燃料供給(バンカリング)が実施されています。今後、舶用燃料としてLNGに加えてアンモニアや水素などの適用が期待される中で、それらを燃料とする船舶へバンカー船からバンカリングする方法として、Ship–to–Ship方式が採用される可能性が高く、今後もニーズが増えていくことが予想されます。
 Ship–to–Ship方式によるバンカリングオペレーションの安全性や作業限界条件を評価する場合、2船に作用する環境外力を精度良く推定することが重要であり、とりわけ2船が近接するバンカリングにおいては、相互の干渉影響を考慮して環境外力を推定することが必要となります。また、大型の燃料タンクや液体貨物を搭載したタンク内における遊動水の影響を考慮することにより、2船の動揺特性が遊動水影響を考慮しない場合に比べて、大きく変化することが知られています。
 バンカリングを行う2船は係留索とフェンダーを介して接続されているため、それらの非線形な特性に加えて、上記の影響等を考慮することで非常に複雑な問題となりますが、海洋システム研究グループではそれらの課題に取り組むことで、2船体のバンカリングオペレーションの安全性や稼働性を精度良く推定するための技術について研究を進めています。


模型試験

Ship–to–Ship方式によるバンカリングの安全性・稼働性評価に用いる高精度な数値計算モデルの構築を目的に、2船体での波浪中動揺計測試験や風荷重計測試験、タンク内遊動水影響を考慮した波浪中動揺計測試験等を実施しています。

2船体の波浪中動揺計測試験の様子

図1 2船体の波浪中動揺計測試験の様子

2船体の風荷重計測試験の様子

図2 2船体の風荷重計測試験の様子
(JSPS科研費JP20K04948)

水槽試験動画 : バンカリング時における2船体波浪中動揺試験

風洞試験動画 : バンカリング時における2船体周りの風場観測試験

2船体まわりの風場計測試験による平均風速分布の結果

図3 2船体まわりの風場計測試験による平均風速分布の結果(JSPS科研費JP20K04948)

バンカー船に作用する風荷重係数の計測例

図4 バンカー船に作用する風荷重係数の計測例(JSPS科研費JP20K04948)

図5 タンク内遊動水影響を考慮した波浪中動揺計測試験の様子とRoll運動のRAO
(JSPS科研費JP25289327)


発表文献

  • 湯川和浩、石田圭、佐藤宏、藤原敏文、加藤俊司、青山憲之、平田裕一:バンカリング時における船舶間LNG移送技術の安全性評価、日本船舶海洋工学会論文集、第19号、pp.69-78、2013.
  • 湯川和浩、加藤俊司、佐藤宏:Ship–to–Ship方式による出荷時の2船体Gap Resonance評価、日本船舶海洋工学会論文集、第31号、pp.93-106、2020.
  • 湯川和浩、齊藤昌勝、眞鍋博紀、岩倉大輔:金属内管ホースを用いたShip–to–Ship方式によるLNGバンカリングの安全性評価、日本船舶海洋工学会論文集、第31号、pp.107-122、2020.

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