Research Overview
日本の排他的経済水域には海底熱水鉱床※1やコバルトリッチクラスト、マンガン団塊など多くの鉱物資源が賦存していることが知られており、その開発のための採鉱システムの研究開発が国家的なプロジェクトとして実施されています。採鉱システムの開発・運用にあたっては、解決しなければならない技術的な課題が数多く残っています。
深海技術研究グループ(以下、当グループ)では海底鉱物資源の開発に資することを目的として、以下の4つのテーマの研究を行っています。
ここでは揚鉱に関する要素技術の研究のうち、揚鉱管内の評価に関する研究についてご紹介します。
海底熱水鉱床で掘削した鉱石を揚鉱する方式として、鉱石と海水をスラリー※4状にしてポンプで移送する方式が想定されています。海底の鉱石を海上へ移送する場合の、揚鉱管の圧力損失を評価することは、鉱石を海上へ移送するためのポンプを設計するにあたり重要となります。当グループでは、これまでに、実験をとおして固定された配管における圧力損失を評価するためのモデルの構築を進めてきました。しかしながら、実際の海では、揚鉱管は海上の船から吊り下げられており、船が波等の影響をうけて揺れることによって、揚鉱管も揺れることが想定されます。そこで、当グループでは、揚鉱管の揺れが圧力損失に及ぼす影響を調査するための模型試験(図1)(図2)を実施しました。当グループで構築した固定された配管におけるモデル式で計算した計算結果と試験結果を比較したところ、配管が垂直に揺れても圧力損失はあまり影響を受けないことがわかりました(図3)。一方、水平に揺れた場合は、多くの範囲では揺れの影響を受けないが、管内流速が遅い範囲では、計算結果より試験結果の方が大きい傾向を示しました(図4)。今後は、さらに詳しい試験などをとおして、より詳細に配管の揺れが及ぼす影響を評価していきたいと考えております。
図1 試験装置概要
図2 試験装置の様子
図3 圧力勾配比較(垂直な流れ)
図4 圧力勾配比較(水平な流れ)