PHYSICAL SYSTEM RESEARCH GROUP
船は海という厳しい腐食環境下を運航し、波による変動荷重を常時受けるため、船体には様々な損傷が生じます。 当グル-プでは、安全安心な社会の実現や、海事産業の競争力強化に貢献するため、損傷の評価・抑制に関係する技術を中心に、建造技術の高度化に資する様々な研究に取り組んでいます。
国際競争力を強化し関連産業の振興・創出を促進するためのコア技術の一つとして、マルチマテリアル化の最適設計及び接合・接着技術の研究開発が注目されています。近年では、異種材接合部の強度向上とともに、新材料の用途が他産業において拡大しており、造船においても新材料の一般商船への利用を推進することが必要です。そこで、当グループでは、高機能材料利用による設計自由度の向上や建造工程の効率化の観点から、これまで船舶ではあまり用いられてこなかった新材料を活用するため、環境劣化促進試験と各種強度試験を組み合わせて、経年劣化を考慮した異種材接着接合技術の長期信頼性の向上に関する研究を行っています。
船舶や海洋構造物は25年を超える長期にわたり厳しい環境下で供用されています。その中でも海水タンクは,腐食損傷が最も激しく,構造健全性マネジメントの高度化が特に求められる区画です。そこで、当グループでは、モニタリングによる事後更新機能を有する腐食シミュレーションシステムの開発を目指して,塗装鋼板の塗膜下で進行する初期捕食の計測手法の検討や、塗膜劣化・金属腐食連成シミュレーション手法の高度化に関する研究を行っています。
脆性破壊は突発的に甚大な被害をもたらし、更に予測が困難です。そのため、船舶関係者にとっては最大の不安要素の一つであり、特に破壊が発生しやすい溶接部の材料強度(破壊靭性値)を正確に把握する必要があります。破壊靭性値を求めるための実験に用いる試験片の形状は規格によって決まっており、機械切欠から疲労き裂を真っすぐ伸ばす必要がありますが、溶接した材料はそのままでは疲労き裂が直進しません。しかし、事前に切欠先端を圧縮(プラテン)することにより、溶接した材料であっても疲労き裂が直進するようになることが知られており、疲労き裂を入れる前にプラテンを行うことが広く活用されております。しかし、従来のプラテン手法では、破壊発生点を直接圧縮するため材料が劣化して材料強度を低く見積もりすぎてしまったり、極厚の試験片などでは圧縮に必要な荷重が大きくなるため大型試験機が必要になるなどの課題がありました。そこで、当グループでは、破壊発生点を直接押さなくても疲労き裂が直進し、かつ、小型試験機の荷重容量でも実施可能な、新たなプラテン手法の国際標準化に関する研究を行っています。