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深海技術研究グループ研究紹介
水中線状構造物の動揺低減技術に関する研究

水中線状構造物にとって上部浮体の動揺および潮流による振動は疲労被害を大きくする原因となり、設計上考慮すべき現象です。そのため上部浮体と水中線状構造物の接続部にはボールジョイントやベンドスティフナーと呼ばれる端部の曲げモーメントを低減するための機構を取り付けることが多く、懸垂式の構造物では接続部をチェーン吊りにして曲げモーメントを逃がすような機構が採用されています。この研究では水中線状構造物の中間部、特に管と管を接続するフランジ部に制振機構を挟み、管全体の振動を抑制する方法を検討しました。

制振機構は建築物の免震機構を参考にして図1のような模型を製作し、これを鋼管を模擬したパイプ模型の間に挟みました。模型試験は海上技術安全研究所内の深海水槽で行い、上部浮体の動揺を想定し、上端部に強制加振装置を用いて強制的な水平変位を与え、このときのパイプ模型の挙動を計測しました。そのときの水槽試験の様子を図2に示します。また水槽試験の計測結果をもとに、海洋開発の分野で広く用いられている商用ソフトウェアである「OrcaFlex」を用いて数値シミュレーションを行い、制振機構の有用性を検証しました。

上端強制加振試験の結果の一例として振幅分布の比較を図3に示します。振幅は上端加振振幅で割って無次元化しています。制振機構なしのケースで最も振幅が大きくなり、積層ゴム式、バネ式、ダンパー式の順に、特に振動の腹の部分で振幅が減少し、最も振幅が減少したダンパー式では制振機構なしと比較して最大4割の振幅低減効果が得られました。 数値シミュレーション結果と水槽試験結果の比較を図4に示します。上端固定時の制振機構なしとダンパー式の制振機構を取り付けたケースそれぞれで数値シミュレーション結果と水槽試験結果のおおよその一致が得られました。また、数値シミュレーションで曲げモーメントの分布を比較すると、上端固定のケースでは制振機構を取り付けた位置でモーメントが逃げるだけでなく管の更に下側および上端接続部においても曲げモーメントが低減しました。


本研究はJSPS科研費 JP 26630461の助成を受けたものです。


本研究の詳細は平成28年に開催いたしました第16回研究発表会資料を御覧ください。(ダウンロード)





図1 制振機構模型とチェーン吊り模型
(左から、積層ゴム式、ダンパー式、ばね式、チェーン吊り装置※1

          ※1 特許第5665024号「ライザー管の懸吊装置および係留管の連結装置」



図2 水槽試験の様子(映像


図3 上端強制加振試験結果
(加振周期5s、振幅0.5m相当)


図4 数値シミュレーション結果と水槽試験結果の比較
(左図:振幅分布、右図:曲げモーメント分布)