スマートフォンやテレビなど、現代の生活に欠かせない便利な機械を作るには様々な種類の金属を大量に必要とします。多くの金属は地中の鉱物資源を精製して作られます。日本は陸上の鉱物資源にこそ恵まれていませんが、日本周辺の深海底には銅・鉛・亜鉛などが含まれる「熱水鉱床」や、鉄・マンガン・コバルトなどが含まれる「コバルトリッチクラスト」と呼ばれる貴重な鉱物資源が、いまだ手付かずのまま眠っていることが分かっています。
真っ暗で高い水圧のかかる深海に眠る鉱物資源を効率的に探すには、どうすればいいでしょうか。こんな時には、自律型無人潜水機(AUV)が頼りになります。「自律型」とは、自分の力のみで航行するタイプという意味です。AUVは内部に電池とコンピュータが搭載されており、これらを使うことにより自力で広い範囲を探索することができます。
これまで海技研で開発したAUVのうち代表的なものを以下に紹介します。
名前 | : |
ホバリング型AUV ほばりん |
寸法 | : | 1,200×700×760mm |
重量 | : | 約 270kg |
設計水深 | : | 2,000m |
最大速力 | : | 秒速0.7m |
航続時間 | : | 8時間 |
名前 | : |
NMRI航行型AUV 2号機 |
寸法 | : |
全長:3,600mm, 直径:600mm |
重量 | : | 約 620kg |
設計水深 | : | 2,000m |
最大速力 | : | 秒速2.1m |
航続時間 | : | 12時間 |
名前 | : |
NMRI航行型AUV 3(4)号機 |
寸法 | : |
全長:3,900mm, 直径:650mm |
重量 | : | 約 545kg |
設計水深 | : | 2,000m |
最大速力 | : | 秒速3.3m |
航続時間 | : | 22時間 |
AUVにはそれぞれ特別な役割を持つ機器が搭載され、海底の様々な性質を解明するのに役立っています。例えば、“ほばりん”には海水温度や塩分濃度などが測れるセンサーが設置されています。また、AUV2号機、3号機は、音波を用いて海底の凸凹や底質が観測できるマルチビームソナーという特殊な機器により、高い解像度で海底地形を帯状に測ってゆくことができるようになっています。
海技研では、“ほばりん”とAUV3号機を使って伊豆諸島海域の海底調査に挑みました。
下の動画は、海底調査のイメージ動画です。
海底調査の結果、下の図に示すように高い精度の海底地形マップを描くことに成功しました。ところどころに見える濃い青色の海底部分は「特異点群」と呼ばれ、熱水鉱床が存在する可能性を示す重要な手掛かりの一つと考えられています。
AUVの調査結果を使って描いた高精度海底地形マップ