最近、夏にものすごく暑かったり、ゲリラ豪雨があったり、逆に雨がとても少ないなど、異常気象と呼ばれる現象が日本をはじめ世界中で起きていて、ニュースで聞いたことがある人もいるでしょう。これと合わせて「地球温暖化」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。この地球温暖化の原因の一つと考えられているのが、GHG(温室効果ガス)という物質です。
地球の表面(地面や海面)は太陽の光によって暖められて熱を放射します。大気には、この熱を宇宙に逃がさない性質を持つガスがあって、これをGHG(温室効果ガス)と呼びます。GHGがちょうどよい量であれば、人が生活しやすい温度を保ってくれますが、GHGが増えすぎると地球の温度をうまくコントロールできなくなって、地球温暖化という現象が起きてしまいます。
南極などの氷が溶けて、海の水が増えてしまうことで、海岸沿いの海面からの高さが低い土地や小さな島は海に沈んでしまう心配があります。また、気温が上がるだけではなく、水温も上がるので、これまでとれていた魚や貝がとれなくなったり、地上では、育つ作物が大きく変わったりして、人の生活に大きく影響します。地球の気象が変わると、人間だけでなく、動物や植物の住みやすい場所も変わり、絶滅するものが出てくる心配もあります。
GHGには、「二酸化炭素」「メタン」「一酸化二チッ素」「六フッ化イオウ」など、いくつかの種類があります。中でも、地球温暖化の一番の原因といわれているのが、二酸化炭素です。二酸化炭素は、燃料を燃やすと出てくるので、自動車や飛行機や船を動かしたり、火力発電所で発電することで、大量に発生しています。
二酸化炭素(CO2)
メタン(CH4)
一酸化二チッ素(N2O)
六フッ化イオウ(SF6)
それでは、GHGをこれ以上増やさないために、私たちは何ができるでしょうか。一人一人ができることとしては、身のまわりの物を大切に使ったり、リサイクルや節電を心がけたりすることも重要な取り組みです。海技研では、いろいろなアイディアを出して、船から出る二酸化炭素を減らす研究開発に取り組んでいます。たとえば次のような研究です。
船が海水を押しのけながら前に進むとき、船は海水からまさつによる抵抗を受けます。このとき、船の底に小さな穴をたくさん開け、そこから空気の泡を出して船の底をおおうと、船が受ける抵抗が小さくなって、船が使う燃料の量を効果的に減らせることがわかりました。このように使う燃料の量が減れば、その分だけ船から出る二酸化炭素を減らすことができるというわけです。
上の絵は、船の底に開けたたくさんの小さな穴から空気の泡を出す様子を海中から見上げた様子です。飛行機雲に似た白い綿のようなかたまりが空気の泡です。実験で確かめた結果、空気の泡を連続で出す(左)よりも、一定間隔で出したり止めたりする(右)方が、船の受ける抵抗が小さくなりました。
これまでの船のエンジンでは、重油と呼ばれる石油の一種を燃やしてきました。重油は炭素をたくさん含むので、燃えるとたくさんの二酸化炭素を発生します。そこで海技研では、燃やしても二酸化炭素を発生しない燃料(アンモニアや水素)を船の燃料として使うために、エンジンで安全に燃やすための研究を行っています。
アンモニア(NH3)
水素(H2)