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令和6年4月9日

 「小型実験船「神峰」による短距離遠隔操船システムの実船実験」を公開
(結果報告)

 国立研究開発法人 海上港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所(所長 峰本健正)は、3月25日(月)、ウェビナー形式にて海技研が所有する小型実験船「神峰」による短距離遠隔操船システムの実船実験の様子を広島県因島マリーナからライブにて公開しました。

実験船「神峰」、及び、「神峰」を使った今年度の実験結果の概要、さらに、本公開実験の短距離遠隔操船システムについて、 自動運航船PTの平田特別研究主幹、同PTの佐藤主任研究員、及び、澤田研究員が説明を行いました。 説明後、神峰は船上の装置を使って因島マリーナを出港し、沖合に向けて航海。その後、船の制御を遠隔操船モードに切り替え、マリーナの桟橋からタブレットを使って操船出来ることを確認しました。 遠隔操船システムは、人手不足が深刻な内航海運において有効な技術です。 例えば、台船(貨物区画)をボートから切り離すことが可能なプッシャーバージ船などに本システムを応用すれば、切り離された台船を陸上から操船する機能が実現できます。 公開実験には、業界から海運会社・船主、造船会社ほか、メディアなど74名の参加を頂きました。


小型実験船「神峰」

通信状態監視機能による安全対策についても実験

実験船「神峰」は全長14.9メートル、エンジンやクラッチ、油圧操舵装置に制御装置を設置し、 陸上の操船タブレットとは、Wi-Fi機器を介して、船内のPLC(Programmable logic controller)に制御信号を送って操船する、短距離遠隔操船システムを構成しました。 遠隔操船では、操船信号を送る通信機能が重要な要素技術となります。通信状態の良し悪しは、船の安全性と直結するため、 短距離遠隔操船システムには、常に通信状態を監視する機能を実装しました。 公開実験では、この機能を使って、通信状態が悪化した場合に、自動的に画面表示と音声により警報が発令され、船舶を緊急停止することが可能であることも確認出来ました。

遠隔タブレット操船の様子

さらに、実験海域において、通信機器類の組み合わせと信号強度との関係を明らかにする実験結果についても、グラフを使って解説しました。 この結果、高性能アンテナなどの装置を使えば、1,600m程度の距離まで通信が可能であることを確認するとともに、 通信の遅れや瞬間的な通信遮断などの危険性も勘案すると、安心して遠隔操縦出来る距離は、1,000m程であることも明らかにしました。

実験終了後の質疑応答では、 通信速度と天候との関係、携帯電話回線や低軌道衛星の活用、 さらには、着桟時にデモンストレーションしたLiDARの活用方法について、質問が寄せられました。 平田特別研究主幹からは、 天候が通信速度に大きく影響しているようには感じていないが、通信速度に影響を与える要因について現在調査中であること、 公開実験では、Wi-Fiを使ったが、携帯電話回線での実験も実施していること、 準天頂衛星「みちびき」など、測位システムの代替機能としてLiDARに期待をしていること、を回答しました。

自動運航船を実現するためには、避航操船機能、自動離着桟機能、遠隔操船機能など、様々な機能が必要となります。 海技研では、これらの機能に関する研究開発を行い、小型船「神峰」を使った実船実験により開発した技術の性能を確認しています。 今後もこの活動を継続し、より良いシステムの開発を目指していきます。