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令和6年5月29日

海上技術安全研究所職員が「日本船舶海洋工学会賞(論文賞)」、
「日本船舶海洋工学会奨励賞(乾賞)」を計4件受賞

2024年5月27日(月)に公益社団法人日本船舶海洋工学会の各賞の表彰式が金沢歌劇座及びオンラインで行われ、当所からは論文賞と乾賞 計4件を受賞しました。
流体設計系新川 大治朗主任研究員、同川島 英幹上席研究員、同濱田 達也研究員、元流体設計系拾井 隆道主任研究員、川北 千春研究特命主管(5名)及び流体設計系白石 耕一郎主任研究員、同澤田 祐希研究員、同新川 大治朗主任研究員(3名)が日本船舶海洋工学会賞(論文賞)1を、海洋先端技術系梅田 隼主任研究員及び知識・データシステム系澤田 涼平研究員が日本船舶海洋工学会奨励賞(乾賞)2をそれぞれ受賞しました。

1 日本船舶海洋工学会賞(論文賞):造船、造機、海洋工学その他一般海事に関する優秀な論文で公表されたものの中から表彰されるものです。
2 日本船舶海洋工学会奨励賞(乾賞):船舶工学および海洋工学分野における若手研究者の創造的研究を奨励し、広く技術の発展を促すため、独創的かつ優れた論文を発表した若手研究者が表彰されるものです。

1.日本船舶海洋工学会賞(論文賞)、日本造船工業会賞

受賞論文:Numerical Study on the Influence of Air Bubbles around the Ship Hull on the Propulsive Efficiency, 日本船舶海洋工学会論文集, 第38号, 2023年12月.

(概要)
 船舶の摩擦抵抗を低減する省エネ装置として、船底に空気を投入することで船体と海水の間に空気と海水の混合流をつくる空気潤滑法がある。これまでに気泡による摩擦抵抗低減に関する研究は数を多く行われているが、気泡が船体とプロペラとの干渉(所謂、自航要素)に与える影響については十分わかっていなかった。
本論文は、船体まわりの気泡の影響を考慮した船舶の抵抗・自航状態の数値シミュレーションおよび船底の気泡が実船の状態近くなるように通常の水槽試験よりも高速で曳航する高速曳航試験を実施することで、船体まわりの気泡が自航要素に与える影響について調査したものである。その結果、気泡は船尾の圧力に影響を与え、推力減少率が変化すること、プロペラへ流入する流れが速くなり伴流利得が減少することが分かった。これらにより、空気潤滑法の省エネ効果の更なる向上には、自航要素の変化を考慮した検討が重要であることを定量的に示した。

(受賞者)
 新川 大治朗(海上技術安全研究所 流体設計系)
 川島 英幹(海上技術安全研究所 流体設計系)
 濱田 達也(海上技術安全研究所 流体設計系)
 拾井 隆道(元海上技術安全研究所 流体設計系)
 川北 千春(海上技術安全研究所 研究特命主管)


写真1

(左)受賞者(左から濱田 達也氏、新川 大治朗氏、川北 千春氏)
(右上)川島 英幹氏、(右下)拾井 隆道氏


2.日本船舶海洋工学会賞(論文賞)、日本海事協会賞

受賞論文:Deformed shape estimation for flexible composite marine propellers by image registration, Journal of Marine Science and Technology, Vol. 28, issue 1, March 2023.

(概要)
 本研究では、弾性変形プロペラの変形量を対象とした定量計測技術を開発した。従来の変形量計測法では、プロペラの流力特性に支配的なピッチやキャンバーといったプロペラ形状のパラメータを再現することが難しかったが、本論文ではプロペラ形状のパラメータを再現するために、コンピュータビジョン分野における姿勢推定手法であるレジストレーションを用いた変形翼形状の推定法を新たに開発した。このシステムで、練習船の樹脂製模型プロペラを対象に変形量計測を行い、計測結果から推定したプロペラ特性が実験値と良好に一致することを確認した。これにより、弾性プロペラの変形量計測を定量評価することが可能となった。

(受賞者)
 白石 耕一郎(海上技術安全研究所 流体設計系)
 澤田 祐希(海上技術安全研究所 流体設計系)
 新川 大治朗(海上技術安全研究所 流体設計系)


写真2

受賞者(左から新川 大治朗氏、白石 耕一郎氏、澤田 祐希氏)


3.日本船舶海洋工学会奨励賞(乾賞)

受賞論文:ガウス過程回帰を用いた波力発電装置の運動モデルの構築, 日本船舶海洋工学会論文集, 第38号, 2023年12月.

(概要)
 本論文では、取得した運動データから、ガウス過程回帰を用いて波力発電装置の運動を予想する運動モデルを構築した。水槽試験の計測データからガウス過程回帰により機械摩擦および発電機のコギング力のような影響が含まれる運動モデルを作成し、十分な精度で波力発電装置の運動を予測できることを示した。この提案した手法は波力発電装置の運動のモデル化にシステム同定試験を必要としないため、システム同定が容易ではない状況では有効な手段である。

(受賞者)
 梅田 隼(海上技術安全研究所 海洋先端技術系)


写真3

梅田 隼氏


4.日本船舶海洋工学会奨励賞(乾賞)

受賞論文:utomatic berthing control under wind disturbances and its implementation in an embedded system, Journal of Marine Science and Technology, Vol. 28, issue 2, June 2023.

(概要)
  本論文は、風外乱下における自動着桟の実用的なアルゴリズムとその実装を提案している。着桟操船は、船員にとってもっとも複雑なタスクであり、負荷の高い着桟操船を自動化することは船員業務の支援につながる。このため、経路追従時の風外乱の影響を分析し、フィードフォワード制御を導入した2自由制御による新しい経路追従アルゴリズムを提案した。提案手法の有効性を、数値シミュレーションおよび実船試験により検証した。検証に際し、産業用コントローラのプログラマブルロジックコントローラ(PLC)で構成されるシステム「AutoBerthPLC」として実装した。実船実験によりラップトップで動作する自動着桟ソフトウェアとの比べ、提案するシステムは高速な制御周期と高い安定性といった特徴を有する。また、実用的なシステムを構築するために、自動運航中、人によるフォールバック応答に必要となる運航設計領域(ODD)に基づく独自のアラートシステムを実装した。本システムは、PLCの状態の自己監視とPLC間の通信状態のモニタリング、風況等に基づき異常時にアラートを発報するものであり、自動運航船の安全性向上に寄与するものである。

(受賞者)
 澤田 涼平(海上技術安全研究所 知識・データシステム系)


写真3

澤田 涼平氏