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特別セミナー開会にあたり登壇した平田宏一所長は、船舶の自動運航、省エネ、代替燃料対応、洋上風力、AUV(自律型水中航行体)、ビッグデータやAI活用に至るまで、多岐にわたる研究所の進める技術研究開発の現況を報告。「技術の融合によって海事産業の持続可能な進化を支える」と挨拶を行いました。
続いて登壇した市川泰久主任研究員(内航研究将来検討チームリーダー)は、「内航海事産業の課題解決と未来に向けて:内航向け新技術開発」と題した講演を行いました。内航海運が抱える課題である船員の不足・高齢化、船舶の老朽化、働き方改革への対応に加えて、2050年カーボンニュートラル達成に向けた、GX・DX推進の重要性を指摘し、「内航は国内物流の中核であり、社会課題に応じた技術開発が急務だ」と強調しました。さらに海上技術安全研究所が、こうした内航海運の課題に対し技術面からの貢献を目的として昨年発足させた「内航研究将来検討チーム」について、その活動方針も紹介されました。
講演の後半では、海上技術安全研究所が進める内航関連の研究成果が紹介されました。まず、ナカシマプロペラ株式会社と共同で開発した、「高度空気潤滑法AdAM(Advanced Air LubricationMethod)」を適用した第二世代空気潤滑システムである「ZERO (Zone 0 ESD for hull ResistanceOptimized by AdAM)」について、技術概要とその効果が発表されました。本システムは船底から空気を「周期的」に吹き出すことで性能向上を図るものであり、2025年1月に就航した内航貨物船「ちゅらさん」に実際に搭載され、実航海において燃費改善効果が確認されています。さらに、LiDARやRTK測位システムを活用した岸壁接近時の操船支援システムや、StarlinkとLTEを組み合わせた遠隔監視・通信技術、機械学習を活用した船速計画技術も紹介され、内航船の高度化と安全性向上に向けた取り組みに高い関心が集まりました。
また、後半の講演では、谷口智之主任研究員(構造・産業システム研究グループ)が、「デジタルシップヤードの実現に向けて~仮想建造シミュレーションとデータ駆動型造船」と題し、造船産業のDX戦略を紹介いたしました。
谷口主任研究員は、艤装品の増加や技能継承の課題を背景に、マルチエージェントに基づいた建造シミュレータの導入や、3D空間上での工程最適化、干渉検証技術による生産性評価など、次世代の造船手法を披露。「E-BOM、M-BOM、BOPなどのデータをサイバー・フィジカル両空間で統合的に活用することで、造船現場の精度と効率を飛躍的に高められる」とデータ統合についての最新の研究成果を紹介いたしました。
また、テクスポート今治Aゾーン(本ブース)では、研究及び施設の紹介、Mゾーン(港ブース)では、内航研究将来検討チームによる、模型を用いた実演、動画・パネルによる研究紹介を行いました。
海上技術安全研究所は、これらの基盤技術を社会実装へと結びつけ、我が国の海事産業の競争力強化に貢献してまいります。
写真1 開会挨拶
写真2 市川主任研究員の講演
写真3 谷口主任研究員の講演
写真4 Mゾーン(港ブース)の様子
写真5 Aゾーン(本ブース)の様子