令和7年6月3日
海洋先端技術系 佐藤 匠主任研究員、金 岡秀上席研究員が日本マリンエンジニアリング学会ロイドレジスター電気電子工学賞、環境・動力系 馬 驍主任研究員、益田 晶子系長が日本マリンエンジニアリング学会奨励賞を受賞
5月30日に開催された2025年度日本マリンエンジニアリング学会総会において、海洋先端技術系 佐藤 匠主任研究員、金 岡秀上席研究員が、ロイドレジスター電気電子工学賞、環境・動力系 馬 驍主任研究員、益田 晶子系長が日本マリンエンジニアリング学会奨励賞を受賞しました。
受賞論文
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複雑地形照合航法によるAUVの自己位置推定、マリンエンジニアリング、59巻、1号、 108-115
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著者
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佐藤 匠、金 岡秀(海上技術安全研究所)
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内容
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自律型無人潜水機(AUV)の運用において自己位置推定は根本的な課題である。従来の音響測位は精度や安定性に課題があり、外部音響装置への依存も運用上の制約となる。地形照合航法(TAN)は有望な自律的自己位置推定手法だが、多くは高価な機器を要し、地形の単調性に弱いという課題があった。本論文では、AUVに標準搭載される深度計・高度計(DVL)のみを用い、潜航前に既知地形情報から地形複雑度を評価して最適な照合場所を選定する新たな自己位置推定手法を提案した。AUVは海底付近到達後、選定された地点で旋回待機しつつ地形照合を行い自己位置を推定する。実海底地形データとAUV航行ログを用いたシミュレーションにより本手法の有効性を検証した。その結果、DVLに誤差がない理想条件では、提案手法は従来の音響測位と同等以上の精度で自己位置推定が可能であることが示された。また、DVLにランダム誤差を加算した条件においても、地形複雑度に基づき事前に照合場所を選定することで、位置推定精度の低下を抑制できることを明らかにした。
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受賞論文
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直接可視化法による小型ジェット式スクラバ内液滴径分布計測とスクラバ内SO2除去解析モデルの拡張、マリンエンジニアリング、59巻、2号、 241-250
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著者
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馬 驍、益田 晶子(海上技術安全研究所)
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内容
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本研究の先行研究では、船舶燃料由来の排ガスを浄化するため、洗浄水液滴をスプレーノズルにより高速で排ガスに噴射するジェット式を採用することで、小型でありながら高効率な後処理装置(スクラバ)を開発するとともに、スクラバによる硫黄酸化物(SO2)除去性能を解析する数値モデルを構築した。しかしながら、従来のモデルではスクラバ内の洗浄水液滴径分布に多くの仮定が含まれており、例えばスクラバ出口温度は計測値と解析値に乖離が生じるなど、改善の余地があった。本論文では、スクラバ内における液滴径分布を直接可視化法により実際に取得し、解析モデルに組み込むことで従来モデルを拡張した。この拡張モデルにより、スクラバ出口温度の解析値が計測値に近づき、その有効性が検証されるとともに、スクラバに噴射した洗浄水液滴が液滴径ごとに、どの程度SO2吸収へ寄与しているのかを詳細に判別できるようになった。さらに、洗浄水流量/排ガス流量比とスクラバに噴射された洗浄水液滴の平均粒子径(ザウター平均径)を導入することで、これら二つの要素のバランスとSO2除去率(スクラバ性能)の相関を明らかにした。これにより、スクラバ内で使用するスプレーノズルの特性から、効率的な排ガス処理条件を推定することが可能となり、スクラバ設計時に活用できる実用モデルとなった。
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