NEWS
受賞論文:船体応答に基づく波浪情報推定における不確定性解析手法-第一報~第三報-, 日本船舶海洋工学会論文集, 第40号, 2024年12月.
近年、世界の海上荷動き量の増加に伴いコンテナ船の大型化が進んでいる。大型船では波浪荷重が船体構造に与える影響が顕著となり、船舶の安全性や運航性能にも影響を与える可能性がある。そのため、船体が遭遇する波を確率的に推定した上で、船体全体の構造応答の不確定性を把握することは船舶設計や安全性評価にとって重要な課題である。これらの問題を解決するため、著者らは三段階にわたり手法を発展させてきた。第一報では、船速の影響を考慮するとともに、正規分布に従う応答関数の不確定性に加えて計測値の不確定性も考慮した確率海象推定法(SWSE)を提案した。第二報では遭遇海象は長波頂不規則波を前提として、主成分分析に基づいて二つの確率変数を用いて正規分布を有する応答関数の不確定性を表現し、波浪情報の不確定性を評価するための確率海象推定法(SWSE-PCA)を提案した。第三報では実船の喫水データに基づき、実際の積み付けを考慮して、対数正規分布の取り扱いが可能な主成分分析(LNPCA)を提案し、さらに短波頂不規則波に適用する手法へと拡張し、船体の任意箇所における応力応答の不確定性の評価手法を提案した。
陳 | 曦 | (海上技術安全研究所 構造・産業システム系) |
高見 | 朋希 | (神戸大学 大学院海事科学研究科) |
岡 | 正義 | (海上技術安全研究所 構造・産業システム系) |
受賞者(左から 高見 朋希 氏、陳 曦 氏、岡 正義 氏)
受賞論文:Structure model-based hazard identification method for autonomous ships, Reliability Engineering and System Safety, Vol. 247, July 2024, 110046
https://doi.org/10.1016/j.ress.2024.110046
従来のリスク解析手法は主にハードウェアを念頭に開発され、自動運航船のようにハードウェア、ソフトウェア及び人間の相互作用が重要なシステムに対応するには新規手法の開発が必要であった。本研究では、自動運航船を対象としたシステム定義や情報整理の方法を含む、新たなシステムモデリングとハザード同定の手法であるStructure model-based hazard identification method(SMB-HAZID手法)を開発した。本手法の特徴は、システムとタスクの構成図、チェックリスト及びキーワードを利用してハザード同定を行う点にある。上記構成図は、Unified Modeling Language(UML)のクラス図を基に開発したシステムモデリング手法によって作成され、ハードウェア、ソフトウェア及び人間を含むシステム全体の物理的構成と機能的構成(要素間の相互作用)の両側面が表現可能である。また、自動運航船特有のハザードの同定に必要な観点を整理したチェックリストと、ソフトウェアと人間によるタスクの実行に関するハザードのキーワード(不実行、誤実行、実行遅延)を解析手法の一部として整備した。本手法を、仮想の自動運航船の初期設計段階におけるハザード同定に適用し、その有用性を確認した。
塩苅 | 恵 | (海上技術安全研究所 海洋リスク評価系) |
伊藤 | 博子 | (海上技術安全研究所 海洋リスク評価系) |
柚井 | 智洋 | (海上技術安全研究所 海洋リスク評価系) |
石村 | 惠以子 | (海上技術安全研究所 海洋リスク評価系) |
三宅 | 里奈 | (海上技術安全研究所 海洋リスク評価系) |
工藤 | 潤一 | (海上技術安全研究所 海洋リスク評価系) |
河島 | 園子 | (海上技術安全研究所 海洋リスク評価系) |
受賞者(左:塩苅 恵、右上:伊藤 博子、右下:河島 園子)
受賞論文:Practical method for evaluating wind influence on autonomous ship operations (2nd report), Journal of Marine Science and Technology, Vol. 29, August 2024.
自動運航船の性能評価のために実船での最終的な検証に先立ち、シミュレータを用いた評価手法は不可欠である。自動運航船の制御アルゴリズムの検証には、高度に現実を再現できるシミュレータが求められており、特に離着桟を考えると、低速度での操船における風の影響は無視できない。そのため、自動離着桟制御アルゴリズムの検証をするためのシミュレータには、現実的な風向風速の時間的な履歴が表現できることが求められる。
先行研究では、平均風向のみを入力として風速の時刻列を生成する簡便な手法を提案していた。第2報となる本研究では、風向の時系列を生成する手法を提案した。桑島の式から計算される係数を用いることで、第1報で提案した手法と同様に、1Dフィルタを用いた確率微分方程式(SDE)を解くことで、風向風速の時系列を計算することができるようになった。提案手法により生成した風向風速の時系列は、実海域における計測値と比較して、十分に一致する結果を得た。
牧 | 敦生 | (大阪大学) |
丸山 | 湧生 | (大阪大学(研究当時)) |
Leo | Dostal | (ハンブルグ工科大学) |
笹 | 健児 | (神戸大学) |
澤田 | 涼平 | (海上技術安全研究所 知識・データシステム系) |
脇田 | 康希 | (大阪大学) |
受賞者(左から 澤田 涼平 氏、牧 敦生 氏、丸山 湧生 氏、脇田 康希 氏)