NEWS
受賞論文 | : | New righting test method for lifejackets using buoyancy Material considering clothing influence、 Transaction of Navigation Vol. 10、 No. 1、 pp. 45-55 |
著者 | : |
黒田 貴子 (海上技術安全研究所) 宮崎 恵子 (海上技術安全研究所、論文投稿当時) 太田 進 (海上技術安全研究所) |
内容 | : |
2016年に英国で救命胴衣を着用した人が水面にうつ伏せの状態で発見された海難事故をきっかけに、舶用救命胴衣の復正性能(人体をうつ伏せの状態から仰向けにする性能)に対する衣服の影響の調査が行われた。その結果、衣服が救命胴衣の復正性能を低下させること、衣服を着用した状態での救命胴衣の復正試験は再現性が低いことが示された。現在の救命胴衣の復正試験は、水着を着た様々な体格の被験者が救命胴衣を着けて水面にうつ伏せになり、復正するかどうかを試験しており、衣服の影響は考慮していない。そのため、衣服の影響を考慮した、再現性の高い救命胴衣の復正試験法が求められている。 本研究では、衣服の代わりに吸水・透水性が殆どない浮力材を用いた、再現性の高い新しい救命胴衣の復正試験法を提案した。被験者の体格に合わせた浮力材の大きさと配置は、著者らがこれまでに提案した船舶の復原性評価に基づく落水者の衣服が生む浮力をモデル化した救命胴衣の復正評価計算法を用いて決定した。衣服を着用した様々な体格の被験者による現行基準を満たしている救命胴衣の復正試験の結果は、約1/3の試験状態で復正性能が不十分と判定されたため、浮力材の影響で約1/3が復正困難になるよう浮力材の大きさと配置を決定した。衣服の浮力の代わりに被験者の胴体側面と脚部側面に浮力材を装着し、慣性モーメントを増加させて復正が困難となるようにした。衣服、または浮力材を着用した被験者による救命胴衣の復正試験の結果、提案する新しい試験法の精度と再現性が十分であることが示された。 |
講演題目 | : | 事故解析における状況認識評価手法—船首方位または対地進路を用いたOZT定量化手法の比較— |
著者 | : |
浅海 里佳子(海上技術安全研究所 海洋リスク評価系) 三宅 里奈 (海上技術安全研究所 海洋リスク評価系) 伊藤 博子 (海上技術安全研究所 海洋リスク評価系) |
内容 | : |
船舶の衝突事故の多くはヒューマンファクターに起因し、操船者の認識が調査の鍵となる一方で、事故後の記憶には曖昧さや不確かさがあり、解析を難しくしている。著者らは、事故解析において操船者の認識に関する情報を扱う際の参考とするため、他船との位置関係に関する操船者の一般的な認識を表す指標の開発を進めている。先行研究では、既往のOZT (Obstacle Zone by Target) を用いて自船と相手船の将来の位置関係を定量化し、得られた指標値と操船者の認識の関係を考察した。本論文では、上記定量化時の計算領域の設定方法における問題点を指摘し、そのうち船首方位を基準に決めることに起因する部分を、対地進路を基準とすることで軽減できることを示した。また、両基準を事故事例に適用し、時系列で比較した結果、船首方位基準では事故前の操船者の認識をより早期から表すこと、対地進路基準では事故直前における回避操船による影響を受けにくいことが、それぞれの特徴として確認された。 |
(左から浅海里佳子研究員、竹本孝弘日本航海学会会長)