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令和7年7月4日

IRISを使った模型船の波浪中試験を公開(結果報告)

令和7年6月26日、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所(所長 平田宏一)は400m水槽において統合水槽試験システム(IRIS)を使った模型船の波浪中試験を公開いたしました。

公開実験の概要

 当所の400m水槽(長さ400.275m、幅18m、水深8.1m)に整備した統合水槽試験システム(IRIS:Integrated highly Repeatable and Intelligent System for tank tests)を使い、模型船の波浪中試験を実施しました。

 最初にIRISの内容の説明を行った後、400m水槽曳引車に乗車し、試験を開始しました。IRISでは予め設定したシーケンスに従い、

  • トリミングタンク*ゲート・北端消波板の下降
  • 試験開始位置までの曳引車移動
  • トリミングタンクゲート・北端消波板の上昇
  • 側面・南端消波板の上昇
  • 造波
  • 曳引車発進
  • 計測
  • 曳引車停止
  • 側面・南端消波板の下降
  • 曳引車復行(計測開始位置まで戻る)
  • トリミングタンクゲート・北端消波板の下降
  • トリミングタンク内に曳引車移動
  • トリミングタンクゲート・北端消波板の上昇

 がスタートボタンを押すことで全て自動で行われます。複数の試験条件をシーケンスに登録することで繰り返し実施が可能です。

 本公開実験には22名の方が参加し、IRISの動作、波浪中の模型船の造波等を観測していただきました。

統合水槽試験システム(IRIS)

 当所では、水槽試験データ、数値計算、実船データを船舶性能統合データベースとして統合し、相互連携した解析を行うことで、信頼性が高くより高精度な運航、船型設計を実現するシステムの開発を行っています。このシステムで重要となる水槽試験のデジタル化(ロボット水槽)を実現するため、新たにIRISを構築しました。

 IRISでは手動操作がないため、計測精度の向上につながります。また、計測者の負荷を軽減することで、計測中の流体現象の観察や計測データの把握に注力できるようになります。

 トリミングタンクからの広範囲の自動化は大型曳航水槽では世界初となります。

 当所では引き続き、水槽試験の自律化・無人化、計測の高精度化に取り組んで参ります。

*トリミングタンクは模型船の喫水や重心を調整するためのもので、水槽端部(北端)に設置しています。

IRIS説明の様子

トリミングタンクでの模型船(開始前)

波浪中試験の様子