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令和元年11月29日

船舶の省エネ技術高度化目指し、空気潤滑法の抵抗低減実験を公開
400m水槽で、36m長尺模型船による高速曳航試験

国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所(所長 宇都正太郎)は10月24日(木)、弊所・400m水槽において、船舶の省エネ技術である「空気潤滑法」の高度化を検証する抵抗低減実験を公開し、産官学関係者を中心に、約30名が参加いたしました。公開実験では、参加者の皆様に模型船を曳航する台車に同乗していただき、実験の一部始終をご覧いただくとともに、高速曳航の臨場感を体験していただきました。

最大10%の省エネ効果を実現する空気潤滑法

当研究所では、船舶の省エネ、温室効果ガスの排出削減に関する各種研究開発を進めております。そのうちの一つである空気潤滑法は、船首船底部から空気を吹き出すことにより、気泡で海水と船体の間(船底)の摩擦抵抗を低減させる方法で、すでに多くの船舶に採用されており、最大10%以上の省エネ効果を実現しています。


空気吹出周波数を制御し、省エネ効果向上へ

さらに現在、当研究所が開発を進めている高度空気潤滑法は従来の空気潤滑法を改良活用し、省エネ効果の向上を目指すものです。今回の実験は、吹出しの周波数を変化させる間欠空気吹出の実験を行いました。小型高速流路を用いた内部流での間欠空気吹出実験では、従来(空気潤滑法)の連続吹出に比べて摩擦抵抗低減効果が増大する可能性があることを確認しています。


実船に近い速度の外部流で、間欠空気吹出効果と空気吹出周波数を確認

公開試験では、長さ36m、幅1mの非常に細長い模型船を用いることで、秒速8メートル(16ノット相当)という実船の船速に近い速度で模型船の曳航が可能になりました。計測結果から実船に近い速度の外部流での間欠空気吹出効果および最適な空気吹出周波数の確認が得られることになります。今後、模型船全体に作用する全抵抗計測と、船底の長手方向に複数配置された局所摩擦抵抗センサーによる計測から、摩擦低減効果の高い空気吹出周波数を見出す予定です。
当実験の一部は、JSPS(日本学術振興会研究費)の科学研究費17H01245「気液二相乱流境界層のスマートコントロール」の助成を受け、北海道大学(村井祐一教授)、室蘭工業大学(大石義彦助教)、明星大学(熊谷一郎教授)との共同研究の一環として行われています。


実験に先立ち、流体設計系の川北グループ長が専門的な内容を解説

実験に先立ち、流体設計系の川北グループ長が
専門的な内容を解説

公開実験現場の400m水槽で、曳航台車に同乗し、興味深く実験に見入る参加者ら

公開実験現場の400m水槽で、曳航台車に同乗し、
興味深く実験に見入る参加者ら


長さ36mの長尺模型船を用いた高度空気潤滑法の抵抗低減実験

長さ36mの長尺模型船を用いた
高度空気潤滑法の抵抗低減実験

実験の概要説明

実験の概要説明