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令和元年11月29日

深海水槽で海底鉱物資源開発システムの模型実験を公開
海底鉱物資源開発にかかる解析手法を検証

国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所(所長 宇都正太郎)は10月28日(月)、当研究所の深海水槽において、海底鉱物資源開発に運用するシステムの解析手法を検証するための模型実験を公開しました。今回の実験は、海底鉱物を採取する採鉱システムの一体挙動解析プログラムに必要な移送管部分における挙動解析手法を検証するためのデータ取得が目的で、水に模擬鉱石を混ぜた固液二相流を移送管模型に流し、管の形状の変化や内圧などの計測を行いました。この解析手法は、海底鉱物資源を代表する海底熱水鉱床開発の商業化に向けた採鉱システムの基本設計に利活用できると期待されています。解説には、海洋開発系の正信聡太郎系長と藤原主任研究員があたり、実験に立ち会った業界関係者ら約20人は、皆熱心に耳を傾けていました。

鉱石を海上まで運ぶ有望なスラリー方式を採用

海底鉱物資源開発では、海底に賦存する鉱物資源を採掘、収集し、移送管や揚鉱管などを通じて海上の生産設備(採鉱母船)まで揚鉱することが必要となります。鉱石を海上まで運ぶ方法としては、鉱石を籠状のものに入れて吊り上げる「バケット方式」、移送パイプの中に空気を入れることで内部流に上向きの流れを起こして鉱石を上昇させる「エアリフト方式」、水中ポンプを用いて鉱石と海水を混合した固液二相流の形態で揚鉱する「スラリー方式」などが検討されています。今回の実験では、海底熱水鉱床開発で現在、最も有望だとされる「スラリー方式」を採用し、その可能性を探っています。


移送管と揚鉱管の挙動を同時解析する一体挙動解析手法に注力

当研究所では、現在、海洋資源開発分野の重点研究として、海底鉱物資源開発システムの基盤技術の構築に取り組んでいます。このシステムにおいては、海底の採掘ユニットから揚鉱管の下端部に取り付けている水中ポンプまで接続可能なフレキシブルな移送管を備えたのが特徴の一つで、このフレキシブルな移送管と、水中ポンプから海上の生産設備までを接続する鋼製の揚鉱管挙動を、同時に解析できる一体挙動解析手法の開発に注力しています。
今回の実験では、内部流を脈動させたり、移送管模型の上端を加振させたりして、これらが移送管模型の挙動に及ぼす影響について調査しました。実験の結果、フレキシブルな移送管は、海底から採掘した鉱石と海水が混じった内部流によって、形状が大きく変化し、海底面との接触や採掘ユニットの移動を拘束する可能性があり、内部流を考慮した動的な挙動推定が必要になることが確認されました。


移送管模型の挙動と管内の圧力を計測

実験に使うスラリー(内部流)には模擬鉱石として4㎜のアルミナボールを使用し、水と混合させます。また、模型は浚渫などに用いられるホースを想定し、実機の5分の1の縮尺で深海水槽内に浮力材で浮かせた形状で設置。管内にスラリーを流して移送管模型の挙動や管内の圧力、管内流量などを計測し、一体挙動解析手法の検証に必要となるデータを取得することができました。公開実験では、その測定値(速報)を紹介しました。参加者らはそれぞれ、最大で水深35mとなる深海水槽内をのぞき込んだり、話をメモに取ったりしながら、興味深く見入っていました。また、実験後の結果解説では、参加者から様々な質問が上がり、海洋開発分野に対する関心の高さがうかがわれました。


深海水槽で行われた模型実験

深海水槽で行われた模型実験。
足場の上の装置から模擬鉱石を、
水槽床に設置した水中ポンプに投入し、
水とともに移送管模型に送ります

水中で浮遊する移送管(右)の内部を通って、水面上のバッファタンクまで送ります

水中で浮遊する移送管(右)の内部を通って、
水面上のバッファタンクまで送ります


実験風景を熱心にカメラで撮影する参加者ら

実験風景を熱心にカメラで撮影する参加者ら

海洋開発系の藤原主任研究員がモニターで実験の概要を説明

海洋開発系の藤原主任研究員(写真奥)が
モニターで実験の概要を説明