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令和2年2月14日

 海技研の研究者3名が「うみコン」で最先端技術を紹介
-船舶の省エネ化やAUV運用の効率化を示唆、将来ビジョンを提示-

 海洋産業の振興・活性化を目的に、最新の研究成果や技術・製品を紹介するビジネス展示会「海と産業革新コンベンション」(うみコン2020)が1月29日、横浜市開港記念会館(横浜市中区)で開催され、海上技術安全研究所から3名の研究者が、基調講演と3国研シンポジウムの双方でプレゼンテーションを行いました。会場では、海洋をテーマに未来のビジネス創出に繋げようと、研究者や技術者、国内外から企業関係者ら約600人が参加し、ビジネスマッチングイベントやパネル展示なども行われました。

 3回目となった今回のうみコンでは、海洋分野で日本を代表する3つの国立研究開発法人(海洋研究開発機構、海洋・港湾・航空技術研究所、水産研究・教育機構)から研究発表を行う「3国研シンポジウム」を、新たな試みとして実施。講演後には、講演者と参加者が直接意見交換できるエクスチェンジミーティングも行われました。海技研からは、3名の研究者が風力発電や船舶省エネ化など最先端技術の研究紹介を行いました。


海技研における洋上風車に関する研究の軌跡と将来ビジョンを示唆

 コンベンション午前に開催されたシンポジウムでは、内閣府の平垣内事務局長ほか2名の知識人による基調講演が行われ、海技研の黒岩隆夫研究特命主管が「海上技術安全研究所における洋上風力発電の取り組み」についてプレゼンテーションしました。黒岩特命主管は、「風力発電は環境負荷が小さく、自給可能なエネルギー源である」と風力発電のメリットに触れ、国内でも既に多くのウィンドファームのコミッショニングが進み、商用化に向けたプロジェクトが進んでいる点に言及しました。また、海技研として環境省からの実証事業(五島沖浮体式風車の水槽実験)で研究を行なった事例を紹介し、風や波、潮流の向きを変えた実験を多方向から実施し、浮体運動や係留等の作用状況等の実証実験の成果を紹介、将来的な有用の可能性とビジョンを説明しました。


海技研の海中ロボティクスへの取り組みAUVの可能性を紹介

 午後に行われた3国研シンポジウムでは、海技研から2人の研究者が研究発表を行いました。まず、海洋先端技術系の佐藤匠研究員は、海洋資源開発などにかかわる⾃律型⽔中ロボット(AUV: Autonomous Underwater Vehicle)の基盤や運用の技術開発と今後の展望について説明しました。海中ロボティクスへの取り組みや海底熱水鉱床など研究の概要を紹介し、これらの目的に対応する複数の航行型AUV、ホバリング型AUV(愛称:ほばりん)、ASV(洋上中継機)で構成される観測システムの開発状況について解説しました。AUVの海底資源探査以外への可能性を広げるため、複数機による同時運用でのノウハウを蓄積して、ホバリング型AUVを活用し、様々な調査に取り組んでいる点を強調しました。さらに、今後の課題として複数機運用による効率化を挙げ、「協調制御による運用の安定化・効率化を目指す」と述べました。


減速運航の時代で、船舶省エネ化は喫緊の課題

 引き続き、流体設計系の⼀ノ瀬 康雄主任研究員が、「デジタル技術による船舶省エネ化の将来展望 」のテーマで発表。一ノ瀬氏は、世界の人口増加より海上輸送量は上回ると予想されていることを前提に、「輸送を担う船舶の省エネ化は喫緊の課題で、デジタル技術によって展望される」ことを強調しました。また、実船では「減速運航」の時代が到来することを示唆し、「減速運航に求められているのは、競争力のある対策だ」と指摘。設計知識(Design Knowledge)を活用する壁が、実船の船会社と計算など造船所にあると具体例を挙げ、船を改善するための膨大なデータベースに設計知識を深化させる観点の必要性を力説しました。さらに、デジタル時代の海技研省エネ技術を紹介し、「海技研クラウド」を核にして、⾼精度な物理実験が可能な水槽試験や実船モニタリングを連携させ、ソリューションに貢献したい考えを示し、「実船スケールでの実海域性能推定・評価技術の確立を目指す」と強調しました。
 シンポジウム終了後には、3国研シンポの講演者6人が壇上の下に並び、参加者と直接対話する初めての試み「エクスチェンジ・ミーティング」を行われ、海技研の研究者にも各方面から多数の質問が投げられていました。


黒岩研究特命主管

黒岩研究特命主管

佐藤研究員

佐藤研究員

一ノ瀬主任研究員

一ノ瀬主任研究員

会場の様子

約600人が訪れた2020年「うみコン」。
シンポジウムも大盛況でした