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令和2年10月9日

波・風中の錨泊船の振れ回り運動に関する水槽実験を公開(結果報告)

国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所(所長 安部昭則)は、9月18日(金)、Webセミナーにて、波・風中の錨泊船の振れ回り運動について模型船を用いて実験した様子を公開実験として公開しました。実験の背景について流体性能評価系田口系長が、実験施設(海洋構造物試験水槽)の紹介と使用した主要な計測装置や機器の説明について海洋開発系齊藤上席研究員が、実験の詳細及び実験状況ビデオの紹介を流体性能評価系宮崎上席研究員が、計測データの説明を海洋開発系渡邊研究員が行いました。公開実験には、業界から海運会社・船主、造船会社ほか、メディアなど57名の参加を頂きました。

模型実験を実施した海洋構造物試験水槽の紹介

今回の公開実験は、Webセミナーで開催したため、最初に実験を行った水槽の説明を海洋開発系の齋藤上席研究員が行いました。実際に現地で見て頂く場合と違い、資料を見つつ口頭で説明を聞く場合では、実験内容の把握などに時間がかかると考え、現地での公開実験に近づけるよう配慮を行いました。まず、現地では近寄ることが出来ない実験施設(台車、造波装置他)を説明した後、今回の実験で使用した主要な計測装置・機器である、錨鎖挙動計測のための水中機器や模型船に搭載した風荷重模擬装置などについて写真を示しつつ説明を行いました。


実験状況や計測データなどを動画を交えて説明

波・風中の 振れ回り運動実験のイメージ

波・風中の 振れ回り運動実験のイメージ


実験映像をご覧頂く前に、流体性能評価系の宮崎上席研究員より実験の詳細説明を行いました。使用する模型船2船型の選定理由や計測項目・計測装置・計測パラメータについて詳細を説明し、実験映像で模型船が振れ回り運動を行う状況をご理解頂けるように配慮しました。

風による振れ回り運動

風による振れ回り運動(フェリー模型、単錨泊)


実験映像では模型船が風と波の影響を受けて振れ回り運動する様を外力条件(風のみ、波・風併存時)や船型(フェリー、タンカー)の影響も含めて確認頂きました。最後に模型船の挙動と錨鎖の状況と錨位置の張力に関して、海洋開発系の渡邊研究員が説明を行いました。走錨の判定に使用する錨鎖張力の解析結果の説明では、張力の増加は振れ回りの端部と外力釣り合い点周辺で発生することを説明し、単錨泊・双錨泊時の振れ回り運動のメカニズムに関する考察や、1錨鎖当たりの発生張力、振れ回り範囲について単錨泊と双錨泊を比較しながら解析結果を報告しました。また、初めての試みとして錨鎖の平面形状に関して端部の方位角と水中カメラ映像から推定したことについて説明しました。最後に補足として、今回の公開実験のポイントは、水中部分の錨鎖の挙動と模型船の挙動の同時計測と風荷重模擬装置を用いた風環境の実現であることに言及しました。質疑応答では走錨に関する実験の質問等もあり関心の高さが伺えました。


当日の説明資料は こちら