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令和3年2月9日

 「新開発の次世代CFRPの成形手法」を公開(結果報告)

 国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所(所長 安部昭則)は、2月5日(金)、ウェビナー形式にて3次元形状の機能性複合部材をより簡便に成形できる、次世代CFRP成形の実演の様子を公開しました。

 海上技術安全研究所・早稲田大学・横浜国立大学の3者が提案するCFRP成形手法の概要や成形実演の動画(VaRTM、L-RTM成形法)について産業システム系の竹澤研究員と櫻井専門研究員が説明を行いました。公開実演では、船舶への新材料の利活用に関して、鉄に比べて強度・剛性が高くて軽い炭素繊維強化樹脂(CFRP)の繊維方向を自由に制御できる3次元成形法について、「TFP」と呼ばれる既存の繊維刺しゅう技術と、複雑な曲面形状を平面展開する技術を組み合わせることで、炭素繊維の配置方向を自由に制御することができ、繊維方向をそろえた高品質、高強度の複雑な3次元形状の成形が可能になることを実演動画を交えて説明しました。
 収録済みの動画を配信するのみではなく、途中ライブで解説を行うなど、視聴していただいた方々の理解が深まるように工夫いたしました。公開実験には、海運会社・船舶用機器ほか、材料メーカー、メディアなど90名にご参加いただきました。


独自技術で炭素繊維を自在に成形可能に

 公開実演では、基盤に積み重ねる繊維の方向を直角に交差させ続けることで強度を高め、機能の向上と品質の安定化が図れるとの説明がありました。プロペラなど複雑な曲面を平面図として落とし込むため、まず高精度な出力方法を独自に開発し、この平面図をもとにした型枠通りにCFRPを貼り付ければ基盤にしわや隙間を出さずに成形できることを実演で示しました。また、展開図は成形の強度が増すように、層ごとで繊維を配置する方向を定めて出力でき、完成したプロペラ翼をエックス線で透過すると、常に繊維が直交していることも分かりました。


将来はより複雑な部材にCFRPを採用することも視野に

 CFRPは鉄に比べて強度が高く、比重も4分の1と軽量であるため、金属部材に代替することで、燃費改善などの効果が期待されており、舶用工業でもプロペラなどで利用が進められています。海上技術安全研究所では、公開実演で紹介した研究を進め、将来より複雑な部材にCFRPの使用が可能になると説明がありました。質疑応答では、金属とCFRPの複合部材など、機能性の高い新たな部材の開発などについて竹澤研究員から説明があり、CFRPなどの成形手法への関心の高さが伺えました。

図1
図1
図2
図2
写真1
左 竹澤研究員  右 櫻井専門研究員