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令和4年6月9日

大坪上席研究員他1名、谷口主任研究員他4名が「日本船舶海洋工学会賞(論文賞)」、拾井主任研究員、松井主任研究員が「日本船舶海洋工学会奨励賞(乾賞)」を受賞

 5月26日(木)に公益社団法人 日本船舶海洋工学会の各賞の表彰式が広島国際会議場及びオンラインで執り行われ、当所からは論文賞と乾賞 計4件の受賞がございました。
 海洋開発系大坪上席研究員他1名、海洋先端技術系谷口主任研究員他4名が日本船舶海洋工学会賞(論文賞)1 を、流体設計系拾井主任研究員、構造・産業システム系松井主任研究員が日本船舶海洋工学会奨励賞(乾賞)2 を受賞しました。   

1 日本船舶海洋工学会賞(論文賞):造船、造機、海洋工学、その他一般海事に関する優秀な論文で公表されたものの中から表彰されるものです。
2 日本船舶海洋工学会奨励賞(乾賞):船舶工学および海洋工学分野における若手研究者の創造的研究を奨励し、広く技術の発展を促すため、独創的かつ優れた論文を発表した若手研究者が表彰されるものです。

1.日本船舶海洋工学会賞(論文賞)
受賞論文:クレーン作業中の吊荷と多目的作業船の波浪中連成運動評価
     クレーン作業中の吊荷と多目的作業船の波浪中連成運動評価(第2報 吊荷が着水した直後での波浪中連成運動解析)

(概要)
 構造物を海底または海上設置するためには、洋上クレーン作業を必要とする場合がほとんどで、最近では構造物も複雑及び大型化してきていることから、求められる作業が高度化しています。どのような洋上クレーン作業を行う場合も、作業時に発生する吊荷の振れ回り運動は船上設備や作業員にとってリスクとなり、さらに、吊荷との連成によって作業船の波浪中運動は影響を受けるため、作業安全性等の評価の際には吊荷と作業船との波浪中連成運動の評価が重要です。
 受賞論文では、様々な洋上クレーン作業が行われる多目的作業船を対象として、吊荷と作業船の波浪中連成運動特性を明らかにすることを目的に、水槽試験と数値計算を使った検討結果について報告したものです。特に、吊荷が着水する前後で、吊式に応じて作業船の横揺れ固有周期が大きく変化することを明らかにしています。

(受賞者)
 大坪 和久(海上技術安全研究所 海洋開発系)
 長谷川賢太(海上技術安全研究所 海洋開発系)
 


2.日本船舶海洋工学会賞(論文賞)
受賞論文:並進動揺型波力発電装置を対象とした実時間最適制御法の水槽模型試験による検証

(概要)
 波力発電装置は海洋波から効率良くエネルギーを取り出すため、波浪エネルギー1次変換装置が制御されます。この論文で対象とした並進動揺型波力発電装置の場合、可動浮体が1次変換装置となります。可動浮体の運動、制御力には、一般的に上下限等の制約があり、制約を考慮しない設計は装置に対して過剰な設備を求め、経済性悪化の要因にもなります。
 受賞論文では、制約条件を考慮できる非線形モデル予測制御を可動浮体の制御法として水槽模型に実装し、実時間制御が成立することを検証すると共に、可動浮体の運動特性、制御力特性、及び発電特性を既存の制御法を実装した場合と比較した結果を報告しています。

(受賞者)
 谷口 友基(海上技術安全研究所 海洋先端技術系)
 藤原 敏文(海上技術安全研究所 海洋先端技術系)
 梅田 隼 (海上技術安全研究所 海洋先端技術系)
 二村 正 (海上技術安全研究所 海洋先端技術系)
 片山 徹 (大阪公立大学大学院 工学研究科)


3. 日本船舶海洋工学会奨励賞(乾賞)
受賞論文:ダブル光ファイバープローブを用いた気泡による乱流摩擦抵抗変化に関する研究

(概要)
 船底から吹き出した空気が気泡となり船底を覆うことにより摩擦抵抗を低減させる空気潤滑法は、船舶から排出される温室効果ガスを削減するのに有効な手法です。一方、抵抗低減の詳細なメカニズムについては未だ明らかになっておらず、これを明らかにすることにより気泡の制御等による抵抗低減効果の向上や、シミュレーションの高度化による空気吹き出し位置の最適設計等が可能となると期待されます。
 受賞論文では、現象の解明において重要な乱流境界層の壁面近傍での局所ボイド率、気泡界面速度、気泡弦長の計測を可能とするため、ダブル光ファイバープローブによる計測手法を開発しました。開発した手法を用いて気泡特性の速度影響について調査し、水平チャネル(回流水槽の一種)において気泡による抵抗低減が発生するためには断面内平均速度が大きくなり気泡が小径化し、浮力よりも気泡に働く揚力が大きくなることにより、気泡が壁面に接触せずに分布することが必要となるということが分かりました。

(受賞者)
 拾井 隆道(海上技術安全研究所 流体設計系)
  共著者:濱田 達也(海上技術安全研究所 流体設計系)
      川北 千春(海上技術安全研究所 流体設計系)


4. 日本船舶海洋工学会奨励賞(乾賞)
受賞論文:船体構造設計のための波浪中応答長期予測値の簡易算式に関する研究

(概要)
 船舶の構造設計では、波浪から受ける力(波浪荷重と呼びます)を適切に推定することが非常に重要です。構造設計では最低限満たさなければならないルール(船級規則)が設けられていますが、従来のルールで与えられている波浪荷重の推定式の精度は必ずしも高くなく、理論的背景も明らかではないものでした。
 これに対し、受賞論文では、波浪中船体応答の基礎理論を重んじたアプローチに基づき精度の高く汎用的な波浪荷重の推定式を開発し、かつ波浪荷重の持つ一般的な性質を調べる方法についても示しました。得られた成果によって、より洗練された構造設計が可能となるとともに、船舶の設計者がどのように設計改善をすればよいのかの方針がいっそう明確になりました。

(受賞者)
 松井 貞興(海上技術安全研究所 構造・産業システム系)
  共著者:篠本 恭平(一般財団法人 日本海事協会)
      杉本 圭 (一般財団法人 日本海事協会)