プレスリリース

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令和6年9月27日
国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所

世界初!ディーゼル機関吸気へのアンモニア混合条件下でのPM計測を実施

国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所(所長 峰本健正) 環境・動力系 環境影響評価研究グループ 大橋厚人(おおはし あつと)上席研究員は、ディーゼル機関におけるアンモニア混焼時の粒子状物質(PM)計測を世界で初めて実施し、令和6年10月24日(木)に、東京海洋大学 越中島キャンパス(東京都江東区)にて開催される日本マリンエンジニアリング学会第94回学術講演会(※1)において、その結果を発表します。
これまで当研究所では、地球温暖化対策の一環として、ディーゼル機関の吸気にアンモニアを混合して燃焼させる研究を行い、排気中の温室効果ガス(GHG)およびブラックカーボン(BC)が低減されることを示してきました。今回の発表では、人体への健康影響を及ぼすとされている粒子状物質(PM)(※2)に関しての知見を公表します。

地球温暖化対策とその先にある大気環境保全に向けて

カーボンニュートラル社会を2050年に実現するという世界的な動きが加速する中、船舶分野においても温室効果ガス(GHG)を削減する次世代船舶の技術開発が進められています。舶用機関においては、カーボンフリーである水素やアンモニア(NH3)が代替燃料として有力視されており、ディーゼル燃料と混合して燃焼させる「混焼」や燃焼改善技術の研究が進行中です。

図1.PMの模式図

図2.アンモニア混焼による
PMの削減

これまで当研究所では、4ストローク実験用単気筒ディーゼル機関の吸気にNH3を供給して、軽油と混焼させる(以下「NH3混焼」と略す)実験において、GHGが削減されることを実証してきましたが、大気環境全体の保全のためには、GHG削減技術によって、他の大気環境影響物質を増加させないことも重要です。そこで、当研究所では排ガス中のGHG以外の成分についても計測研究を行っています。
その結果、同じく地球温暖化効果があり、炭素原子のみで形成されるブラックカーボン(BC)は、発熱量で40%のNH3を供給(NH3混焼率40%)した場合、炭素源が減少するため、ほぼ排出されなくなることがわかっています。
一方、人体への健康影響が問題視される粒子状物質(PM)は、図1に示すように、BCの他に、有機炭素、無機塩類が含まれる複合体となっています。そのため、NH3混焼率の増加により排出量が減少するかは自明ではなく、また、NH3混焼時のPM計測もこれまで例がありませんでした。
今回の計測実験の結果、BCと異なり、PMはNH3混焼率40%もしくは70%でも排出が確認されました。しかし、その排出濃度は、NH3混焼率70%時に、軽油のみの燃焼時の1/3程度に減少することがわかりました(図2)。また、PMの成分分析をおこなったところ、NH3混焼率増加に伴うPM排出量減少の要因は、BCの減少によるものであり、NH3混焼率70%時のPMの主要成分は有機炭素であることがわかりました。本報告は、NH3混焼時のPM排出およびその成分に関する世界初の発表となります。

(※1)日本マリンエンジニアリング学会第94回学術講演会参加希望の場合は、下記URLで受け付けています。(10/7(月)が申し込み〆切日となっています。)
  https://www.jime.jp/conference_top/conference_application

(※2)PMの計測はISO 8178(往復動内燃機関-排気排出物測定)(JIS B 8008)に定められた手法でおこなっています。


<お問い合わせ先>
国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所
海上技術安全研究所 企画部広報係
Tel : 0422-41-3005 Fax : 0422-41-3258
E-Mail : info2@m.mpat.go.jp
URL : https://www.nmri.go.jp/

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